昨年4月から始まった消費者庁の有識者会議「遺伝子組み換え表示制度に関する検討会」の第10回が本日開かれ、傍聴に行ってきました。
8回目からは報告書のまとめに入り、文言の確認や訂正など細かな話がほとんどになり、今回で終了となります。
「遺伝子組み換え表示制度に関する検討会 報告書(案)」はこちら
これまで検討会の内容に抗議するたびに消費者庁は「まだ検討過程であって、これで決定というわけではありませんので」などと言い訳していましたが、結局一旦決まったことが後で覆るということは一度もありませんでした。
改善されたことはなにひとつなく、唯一変わったのが「遺伝子組み換えでない」と表示していい要件が今までの「遺伝子組み換えの意図せぬ混入が5%以下」から「遺伝子組み換え不検出のもの」に厳格化されることになったこと。
要件が厳しすぎるため、特にとうもろこしでは「遺伝子組み換えでない」と表示できる製品は市場から消えることが予想されます。
ただし検出されるけれど5%以下、という区分に関しては、事実に即した内容の表示をしてもいいことになりました。
任意表示なので、表現は一通りに限られるわけではないのですが、消費者庁が例示したものはどれもイマイチわかりにくいのが問題です。
※以下消費者庁が挙げた例です↓
(1)枠外に表示する場合
遺伝子組換え原材料の混入を防ぐため分別管理されたとうもろこしを使用しています。
分別管理された 大豆を使用していますが、遺伝子組換えのものが含まれる可能性があります。
遺伝子組換え大豆ができるだけ混入しないよう、生産・ 流通・ 加工の段階で適切な管理を行っています。
遺伝子組換え大豆ができるだけ混入しない原材料調達・製造管理を行っています。
大豆の分別管理により、できる限り遺伝子組換えの混入を減らしています。
(2)枠内の原材料欄に表示する場合
遺伝子組換え原材料の混入を防ぐため分別管理されたもの
遺伝子組換えの混入を防ぐため分別
遺伝子組換え混入防止管理済
↑
引用ここまで
わたしはわかりやすい表現の例をいくつか考え、検討委員全員に郵送したのですが、わたしのイチ押しの「ほぼ遺伝子組み換えでない」は誰も取り上げてくれず残念です。
「95%以上遺伝子組み換えでない」「99%以上遺伝子組み換えでない」などパーセンテージを入れる案も提案してみましたが、こちらに関しては、賛同を示す意見も出ました。
(松岡委員が「遺伝子組み換えの混入は5%以下」という表現を提案したのに対し、近藤委員が「それよりは『95%以上遺伝子組み換えでない』のほうがいいんじゃないですか」と提案。澤木委員も「数字が入るとわかりやすい」と同調)
ただ座長は「食品表示の基準として数字を入れるのはむずかしい。基準はそれぞれのメーカーによって異なる基準を設けて管理している場合もあるし、変動のリスクもある。事実に即した内容であれば禁止するということはできないが……。ただ、数字を出すのはむずかしい。書ける業者は書いてもいいが、書くことを強制はできない」という意見。
5%以上の場合は「遺伝子組み換え不分別」の表示をすることが義務付けられますが、5%以下の場合は、義務表示ではなく、任意表示です。任意表示なのですから書くことを強制するものではないのは最初からわかりきっていることで、それを考えると座長の言っていることは意味不明です。
どうも消費者庁と座長は消費者に分かりやすい表現にすることを敢えて避けている、わざとわかりにくくしようとしていて、そのために苦しい言い訳をしている……そんなふうな印象を受けましたが、みなさんはどうお感じになるでしょうか。
最後に検討委員が一言ずつ感想を述べて終わりになりましたが、その中で松岡委員が「わたしはまったく素人のような状態で検討会に入ってしまって、最初のうちは何もわかっていなくて、今から考えるともうしわけなかった。表示制度ができるとき(16年前)にも多少関わったので、遺伝子組み換えのことはわかっているつもりだったが、それからだいぶ年月が経って、自分の知らないことが実はたくさんあった。反省している。途中から勉強していろいろ分かってきたような具合で、できれば最初からもう一度やり直したいくらいだ」というような意味のことを言っていたのが印象的でした。
昨年末から今年の1月にかけて、わたしたちが消費者代表の検討委員に「遺伝子組み換えでない表示をなくさないで」と呼びかける大量のハガキや意見書を送ったり、またわたしが「遺伝子組み換え食品の安全性に関して」と題する約20枚に渡る資料を送ったりしましたが、その後の第8回検討会から、松岡委員は突然、これまでとは打って変わって、積極的に消費者の意を汲んだいい意見をどんどん出してくださるようになり、その変貌ぶりに驚いていたところだったのです。
働きかけの効果があってよかった、と思ったと同時に、その前にも働きかけはしたつもりでしたが、やっぱり足りなかった、もっと最初からしつこくたくさん資料を送っていればよかったのかもしれない、とも思ったことでした。
しかしどんなに消費者側委員ががんばってくれても、検討会の場では多勢に無勢。消費者委員3人、事業者委員3人、学者委員3人という構成ですが、学者がみな事業者寄りなので、消費者側委員の意見が通る見込みは少ないのです。
国が消費者の要望を汲み取ろうとする意志がないことはよくわかりましたが、とはいえ、あきらめて何もしなくては、ますますなめられるばかりですので、抗議すべきときには抗議する、ということは、続けていくべきだと思っています。
3月27日には「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」等の団体が抗議の院内集会を開きますので、ご都合つく方はぜひお出かけくださいね。
http://gmo-iranai.lolipop.jp/archives/2298/
検討会が始まる前、会場前でスタンディングしています。