ページタイトル-GMは社会的に問題2

◆農家の支出は増える一方

遺伝子組み換えのタネは、在来種のタネよりも高額だ。でも企業は「殺虫剤を使わなくて済むから農薬代が節約になる」「除草の手間が省けるから人件費が減らせる」「収量もアップする」「だから収入が増える」などとさかんに宣伝するので、それを信じて栽培を始める農家も多い。しかし、現実はどうだろう?

遺伝子組み換えのタネは、在来種のタネよりも高額だ。でも企業は「殺虫剤を使わなくて済むから農薬代が節約になる」「除草の手間が省けるから人件費が減らせる」「収量もアップする」「だから収入が増える」などとさかんに宣伝するので、それを信じて栽培を始める農家も多い。しかし、現実はどうだろう?

殺虫剤を使わなくて済む、と聞いていたはずなのに、害虫が次第に増えて、結局殺虫剤を買わなければならない。除草の手間が省ける、と聞いていたはずなのに、スーパー雑草が現れて、結局除草しなければならない。収量がアップするどころか、作物が病気にやられてひどい不作になる年もある。不作になれば、収入は大幅な減少だ。土壌が次第に悪化するため化学肥料は次第に大量に必要になり、そのぶんの経費もかさむばかり。タネの値段もみるみる上がり、支出はどんどん増える一方。……最初に聞いていたのとは話が違う、収入は増えるどころか逆に減ってしまった、と多くの農家が訴えている。

フィリピンのカピス州ルソット地区では「GMコーンで収入が倍になる」盛んに宣伝が行われた。それに魅かれた農民たちは、借金をして、GMコーンの種子や肥料を買い、栽培に乗り出した。しかし結局思ったほどの収穫はなく、農民たちは借金のかたに自分たちの土地を取り上げられてしまった。ルソット地区のほとんどの農家が土地を失ってしまったんだ。

農家の支出は増えるばかり

インドの綿花栽培農家も、借金をして種子や肥料を購入し、収穫物を売ってやっとその借金を返すというギリギリの暮らしを繰り返している。不作だと借金が返済できず、場合によっては、自殺にまで追い込まれることになる。Bt綿の導入によってインドでは農民の自殺がこれまで以上に増えているという。

インドの自殺者アップ

インドの農村で自殺した25歳の青年の葬列。Bt綿の不作によって借金を返せなくなり、農薬を飲んで自殺したという。(「アグリビジネスの巨人モンサントの世界戦略」より)

2005年にBt綿を導入したインドのマハシュトラ州ビダルバ地区では、2006年までの1年間で600人が自殺した。2年目は半年で680人と、自殺者は倍のペースに加速している。

 

ビダルバ地区の自殺者地図。びっしり並んだどくろマークが自殺者の多さを物語る。

ビダルバ地区の自殺者地図。びっしり並んだどくろマークが自殺者の多さを物語る。地元の農民活動家キティル・ショワリ氏作成。(「アグリビジネスの巨人モンサントの世界戦略」より)

参考資料:「失敗の10年―GMコーンに騙された農民たち」

「アグリビジネスの巨人“モンサント”の世界戦略」

◆特許権侵害で訴えられる

モンサント社などの遺伝子組み換え企業は、組換え遺伝子は知的財産だと主張し、それに特許をかけている。しかし、特許というのはそもそも、工業製品を発明した人の労苦が報われるように、という主旨でつくられたもののはずだ。一定期間は発明者が独占的につくる権利があり、他の人がそれを作りたい場合は、発明者に特許使用料を払わなければならない。この場合、半導体やLED電球が、いつの間にか家の中で発生していたり増殖していた、なんてことはあり得ないので、意識的にそれを製造しない限りは、特許使用料を払う羽目に陥ることはない。

増殖する電球

しかし、植物には命があり、人間が関与しなくても、勝手に自己増殖する。風で飛んできたタネが自分の畑で芽を出して勝手に成長することもある。

そんな場合でも、それがGMのタネだったら、特許権の侵害で訴えられる、という事が起こり得るんだ。

 

特許権侵害-1

 

特許権侵害-2-2

 

特許権侵害-3

そんなタネをまいた覚えはない、といくら主張しても、畑の作物を検査して、組換え遺伝子が見つかれば、それだけで特許権の侵害だ、と裁判で認定されてしまう。そんなケースが海外では実際に起きている。これはずいぶんと理不尽な話じゃないだろうか。遺伝子組み換えは「除草剤耐性」とか「殺虫性」などといった特性を持たせることが目的なのか……それとも企業がその特許権を主張して、利益を独占することこそが真の目的なのか……キミはどう思うかい?

◆無理矢理栽培させられる

 

特許権侵害-4

 遺伝子組み換え作物の代表的企業であるモンサント社は、人の畑に勝手に入っていって、その作物を分析し、組換え遺伝子が検出されると、特許権の侵害でその農家を訴える。北米ではそうやって何百件もの農家が訴えられ、そのせいでたくさんの農家が破産に追い込まれているんだ。

破産したくないと思ったら、おとなしく特許使用料を支払い、モンサント社と契約を結ぶという選択をせざるを得なくなる。

契約を結ぶと、

・自家採種は禁止

・毎年モンサントから種を買う

・農薬はモンサントのものを使う

・毎年ライセンス料を払う(40ドル/ha)

・守秘義務

・モンサントポリスの立ち入りを許す

などが義務付けられる。

本当は遺伝子組み換え作物なんか栽培したくない、と思っても、破産を免れるためにそれを栽培するしか選択肢がない……。そんなふうに農家が追い込まれていくのが遺伝子組み換え作物の一番恐ろしいところかもしれない。

岐路に立たされる農家
参考資料: 「サルでもわかるTPP」第7章-3
「アグリビジネスの巨人“モンサント”の世界戦略」
「パーシー・シュマイザー、モンサントとたたかう」
『世界食料戦争』天笠啓祐著

◆タネが企業に独占される

特許権を盾に利益の拡大をねらう企業は、種苗会社の買収を各国で進めている。インドではBt綿のタネの価格は在来のタネの4倍もするが、農家はそれを買うしかない。というのは、インドにあった種苗会社をモンサント社が買収してしまい、在来のタネが市場に一切出回らなくなってしまったからだ。

種苗会社の買収

在来のタネが手に入る地域で、そのタネをまいても、GM品種と交雑してしまえば、特許権の侵害で訴えられる可能性がある。そうやって世界中のすべての種子に対して特許権を主張し、支配下におさめて、その値段を好きなだけ吊り上げ、利益を思うがままにむさぼる……それこそがGM企業の狙いなんじゃないだろうか。

タネを握れば

参考資料:ドキュメンタリー動画「アグリビジネスの巨人“モンサント”の世界戦略」

◆交雑で農家は大損害

2010年、沖縄で販売されていたパパイヤから、未認可の遺伝子組み換え体が発見されるという事件が起こった。青い未熟なパパイヤを野菜として食べるのは沖縄独特の食文化で、このパパイヤも果物としてではなく、野菜として販売されていたものだった。調査によると、このパパイヤのタネは台湾産で、「台農5号」という非GM品種として輸入・販売されたものであることがわかった。

未認可のGM作物を野放しにしておくわけにはいかない。「台農5号」を栽培する農家に、農水省はその伐採を命じた。農家はGM作物だなどとは夢にも思わず栽培していたのに、せっかく育てたパパイヤの木を泣く泣く自分で切り倒さなければならなかったんだ。

「台農5号」の出荷はストップ。それ以外のパパイヤも価格は大暴落。「台農5号」を栽培していた農家35軒はもちろん、他のパパイヤ農家まで大損害を被った。しかし、伐採を強いられた農家に対する補償は、代替の苗の配布だけ……。こりゃあ、ずいぶんな話じゃないかい?

GMパパイヤによる損害

そもそも、なんで非GM品種として売られていたものから、組換え遺伝子が発見されたんだろう。台農5号が開発された台湾では、中興大学というところでGMパパイヤの開発研究を行っており、気づかぬうちにその遺伝子が交雑してしまったようだ。

農水省の見解によれば、これは農水省の責任ではない。そんな不良品を輸入して販売する業者が悪い。農家は種苗会社に民事訴訟を起こして損害賠償を請求すればよい、となる。

しかし、7000万円もの被害額を、中小零細の種苗会社4社でどうやって補償できるのか……。

GMパパイヤ輸入業者

GM作物と在来種との交雑は、このように大きな経済的損失を生む。しかし、GM作物も植物である以上、在来種との交雑を完全に防ぐことは不可能に近い。GM作物の栽培が拡大するにつれ、このような事件は今後どんどんと増えて行くんじゃないだろうか。

参考:「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンニュース136号」(2012.1.31)

新聞「農民」記事データベース 「沖縄 未承認のGMババイア流通」

http://www.nouminren.ne.jp/newspaper.php?fname=dat/201105/2011053001.htm

 

◆良心的な科学者は抹殺される

遺伝子組み換え作物は健康に悪いとか、環境に問題だ、などという研究結果を科学者が発表しようものなら、モンサント社が黙っちゃいない。そんな研究は信頼に値しない、と世間に思わせるために、彼らはあらゆる手段を使う。

たとえば、カーン大学のセラリーニ教授らの論文(「健康に問題」の章参照)が、2012年にFood & Chemical Toxidologyという雑誌に発表され、センセーションを巻き起こすと、モンサント社は画策して、自分たちの息のかかった編集委員を編集部に送り込んだ。そして遂に2013年末にはその論文を撤回させてしまった。

2001年、雑誌ネイチャーに発表されたイグナシオ・チャペル教授らの論文も話題を呼んだ。コーンの原産地メキシコで、在来のトウモロコシが遺伝子汚染されている、という内容だ。その時はインターネット上で中傷キャンペーンが繰り広げられた。「チャペラは科学者という前に活動家」などと誹謗中傷し、ネイチャーに抗議文を送りつけるよう呼びかけるEメールが世界中の科学者に発信されたのだ。その発端となった2人の人物(メアリー・マーフィーとアンドラ・スメタチェフ)のEメール発信元のIPアドレスをたどっていくと、ひとつはモンサント社のセントルイス本社のもの、もうひとつはモンサント社を顧客に持つ広告会社のものだということが判明した。

このようなモンサント社の画策によって、世界中で何人もの良心的な科学者が、失脚や失職に追い込まれている。

抹殺される科学者

ボクらが大手マスメディアで、遺伝子組み換えは有害だ、という情報を目にすることはないが、その裏にはこうした意図的な情報操作があることを知ってほしい。

 

参考資料:モンサント社が科学雑誌に干渉?

トウモロコシ品種多様性の中心地であるメキシコにおいて遺伝子汚染

「アグリビジネスの巨人“モンサント”の世界戦略」


「サルでもわかる遺伝子組み換え」作者、安田美絵
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