消費者庁の「遺伝子組み換え表示制度に関する検討会」のメンバーは、遺伝子組み換え食品の安全性に疑問を持っていない人がほとんどのように見受けられます。
事業者や学者はともかく、せめて消費者代表の委員には、安全性についての危機意識を持ってほしいところです。
そこで、消費者代表の3人の委員に、「遺伝子組み換え食品の安全性について」と題する資料(A4×19ページ)をお送りしました。
1.Bt毒素の害
2.Bt毒素を含まない遺伝子組み換え作物の害
3.安全性審査の欺瞞
と3つに章立てしたので、今回はまず第1の章をご紹介します。
※現在勃発している表示制度改悪の危機と、それを防ぐための検討委員への働きかけについてはこちらをご覧ください。
1.Bt毒素の害
遺伝子組み換えによる健康被害の中でも、もっとも顕著だと思われるのが、害虫抵抗性(=殺虫性)遺伝子組み換え作物に組み込まれるBtたんぱく(Bt毒素)の害です。
これはバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensisその頭文字がBt)という土壌細菌が持つ毒素で、昆虫の消化器を破壊して殺す作用を持っています。そのため害虫が寄り付かない、というわけです。
インドではこのBt毒素を組み込んだ遺伝子組み換え綿(Btコットン)の栽培が盛んですが、綿を収穫した後の葉や茎を水牛に食べさせると死んでしまうことが確認されています。
アンドラプラデシ州の村では、長年収穫後の綿を水牛に食べさせてきて、何の問題もありませんでした。
ところがBtコットンを1日だけ食べさせたところ、3日以内に水牛13頭すべてが死んでしまったといいます。
インドのデッカン開発協会は、インドで大量の家畜が死ぬようになったのは、Bt綿が原因なのでは、と疑いを持ち、政府に調査を要請しました。
しかし無視されたため、独自に9匹の羊で実験を行いました。
6匹にはBt綿を、3匹には在来の非遺伝子組み換えの綿を食べさせたところ、Bt綿を食べた羊は1か月以内にすべて死んでしまったといいます。
キラン・サッカリ氏↑(農業科学者)は、殺虫剤なしで育った在来の綿を食べた羊は元気なままだった、と証言しています。
フィリピンでは、除草剤耐性と殺虫性の両方を併せ持つとうもろこしの栽培が一部で広まっていますが、ここでも水牛への顕著な害が確認されています。
ジーザス・アグスティン氏↑(フィリピン、イサベラ州農民組織)は「GMコーンを食べさせると水牛は死んでしまう」と証言しています。
また、「GMコーンを食べると病気になる。下痢になる。食べてはいけない」とも語ります。
農民たちは栽培を開始した当初は売るだけでなく、自家用にも消費してみましたが、みなお腹をこわすなど、体調が悪くなることを身をもって体験しました。
メルコール・アスパルド氏↑(フィリピン、カマカ州、農家)によれば、みな懲りてしまって今はもう誰もGMコーンを食べるものはいない。売るだけだ、と言います。氏はまた以下のようにも語っています。
「誰も食べてはいけないといわない。技術者たちはラベルに書かれている指示に従えとだけいうのだけれど、他の農民たちは読み書きを知らないから、コーンを食べてしまう」
あたかも読み書きできれば、種子のラベルに「このコーンは食べてはいけない」と書いてあるのが読めるのに、といわんばかりの口調です。
実際にはまさかそうは書いていないでしょうが、GMコーンが健康に有害であることが、いかに彼らにとっての常識として既に浸透しているかが伺える証言です。
またアスパルド氏自身は、「わたしは先月少し食べた。胸が痛んで、咳が出た」とも証言しています。
Bt毒素は昆虫には有害だが、哺乳類には無害、とされています。以下は厚労省の説明です。
↑厚労省の説明
しかし、それは明らかに嘘であることが上記の事例からわかります。
哺乳類の種類によってBt毒素に対する感受性の違いがあり、水牛はきわめて感受性が高く、羊もかなり高い、また人間はそれに比較して低いのであろうことが推測されます。
人間はBt毒素を食べても死ぬことはありません。しかしフィリピンの農家の証言を聞く限り、人間の消化器にもかなりのダメージを与えることが伺えます。
アメリカで消化器系疾患が増えているのも、遺伝子組み換え食品に含まれるBt毒素との関連が疑われます。遺伝子組み換え食品が流通し始めた1996年を境に、消化器疾患が増加していることを示すグラフがあります。
ジェフリー・M・スミス氏↑(責任ある技術者協会創設者)は語ります。
「Btは昆虫の消化器に穴を開け、殺します。Btとうもろこしが90年代半ばに食卓に上がり始めたと医師たちが知り、これで消化器疾患の急増に説明がつくと言いました」
また、アメリカではアレルギーの激増が指摘されています。
ゲーリー・ハイヤー氏↑(シェフ・食育活動家)は語ります。
「25-35年前、食物アレルギーは稀でした。今はアレルギーだらけです。黒コショウアレルギーさえあります。セリアック病という小麦アレルギーも増えています。乳製品や魚介類などのアレルギーはもちろん、パセリや普通の緑黄色野菜にすらアレルギーを持つ人がいます」
激増するアレルギーの背景には、リーキーガット症候群(腸が漏れやすい状態になっていること)があり、その背景にBt毒素を含む遺伝子組み換え食品があることを多くの医師や栄養士が指摘しています。
これをご理解いただくために、まずはアレルギーのメカニズムを簡単にご説明しましょう。
人間の小腸は、たんぱく質がアミノ酸にまで分解されてはじめてそれを吸収するようにできています。
A=アミノ酸 P=たんぱく質
しかし何らかの原因で腸が緩んで(あるいは傷ついて)しまうと、まだ消化が不十分なたんぱく質のままで吸収されてしまうようになります。
A=アミノ酸 P=たんぱく質
たんぱく質が血液の中に吸収されると、人間の体はそれを外敵(細菌やバクテリアなど)と勘違いして、それに対抗するための「抗体」をつくります。
A=アミノ酸 P=たんぱく質 Y字状のもの=抗体
抗体がある程度まで増えると、アレルギー発症準備が整ったことになります。
次に同じ種類のたんぱく質(=抗原)が入ってくると、抗体が肥満細胞に乗って出動し、たんぱく質を攻撃します。
肥満細胞から刺激物質が放出され、かゆみや腫れなどのアレルギー症状が引き起こされます。
ヒスタミン ロイコトリエンなどの刺激物質が分泌される
刺激物質が皮膚や粘膜を刺激
これがアレルギーのメカニズムです。
根本には小腸が漏れやすくなっている、という問題があることがおわかりいただけるでしょう。
小腸を緩めるものは冷たい水、砂糖、化学物質などいろいろあるのですが、そのひとつがBt毒素であると考えられます。
その証拠に、遺伝子組み換え食品を一切食べないようにすると、アレルギーが治る、ということを、多くの医師や栄養士が確認しています。
アシュリー・コフ氏↑(栄養士)
「アレルギーの激増を目の当たりにしてきました。しかし患者の食生活を改善し、遺伝子組み換えでない食品や有機食品を処方すると、症状は無くなります」
マイルト・アッシュ氏↑(医師)
「学術論文によると、近年増えている症状の多くが腸からの漏れに起因しています。GMOが有害だという重大な証拠の一つです」
表示義務のないアメリカでは遺伝子組み換え食品は野放し状態で流通しています。一方、日本では現在、「組み換えられたDNAやそれによって生成したタンパク質が含まれる食品」には表示義務があり、表示義務のある食品で遺伝子組み換え不分別のものは流通していません。Bt毒素はたんぱく質ですから、それを含む食品には表示義務があります。結果として、Btコーンは、コーンスナック菓子などに、最大でも5%以下が混入しているのみです。現在の表示制度が、期せずして、Bt毒素の害から日本人を守るしくみとしても機能しているのです。
表示は本来、消費者の選択の権利を保障するものであって、流通を規制するものではありません。しかし、現実にはBt毒素を大量に含む食品の流通を阻害し、日本人の健康を守るのに役立っていることを、ぜひご理解いただきたいと思います。
5%以下でも含まれていることは問題だ、という考えももちろんあります。
しかし、本当に健康に気を付けたい人は、コーンスナック菓子など食べなければ済む話です。心配なのは、健康に何の関心もなく、表示を見ることすらなく、値段だけで商品を選ぶような大多数の消費者です。彼らも現在はBt毒素の害からほぼ守られています。
しかし、仮に「遺伝子組み換え不分別」表示を免れる混入率が1%に設定され、企業がそれをクリアできなくなり、IPハンドリングしてもしなくても同様に「遺伝子組み換え不分別」表示を義務付けられるようになれば、手間もお金もかかるIPハンドリングなどやめてしまおう、という企業が出てくる可能性があります。
そうなると、「遺伝子組み換え不分別」のコーンスナック菓子が流通するようになり、Bt毒素満載の食品を食べる消費者も出てくることになります。
それは表示を見ない彼らの責任、という考え方もできるでしょう。しかしわたしは、それを防ぐ方法がある限りは、防ぐよう努力するのが、人としての正しい道であるように思えてなりません。
ぜひ表示制度を考える際には、上記のことを念頭に入れていただけますようお願い致します。
※現在勃発している表示制度改悪の危機と、それを防ぐための検討委員への働きかけについてはこちらをご覧ください。