9/27に行われた、消費者庁の「遺伝子組み換え表示制度に関する検討会」第5回の議事録が、やっと数日前に公表されました。
いろいろといい意見も出ているのに、なぜこういう結論になってしまうのか。
前提となる知識の共有が十分でないから次回に補足説明を求める声もあったのに、それを待たずに結論を出してしまうのは、あまりにも性急であり拙速では。
などなど、読むほどに不満が募ります。
長い議事録から特に気になった部分をピックアップし、わたし個人の意見も交えてお届けします。
全文(32p)を読みたい方はこちらをご覧ください。
まず蓮見課長補佐より論点の説明
①表示義務対象範囲
論点1 表示義務対象品目の検討
論点2 表示義務対象原材料の範囲の検討
②表示方法
論点3 消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え」及び「遺伝子組換え不分別」表示の検討
論点4 「遺伝子組換えでない」表示をするための要件の検討
蓮見課長補佐「(表示制度が)このように整理された理由(中略)2つ(中略)
組換えDNA等が、科学的・技術的に検出できず、公的機関による事後的な確認等が困難であるため、虚偽表示の横行等により表示の信頼性や実行可能性を欠くこととなるということ。
それから、組換えDNA等が加工工程により除去・分解されて、食品中に存在しない場合には、遺伝子組換え農産物を原材料とするものと非遺伝子組換え農産物を原材料とするものとの間で、製品レベルでは科学的に有意差がないということになりますので、区別した表示を義務づけることは困難。
このような整理がなされた結果、加工後も組換えられたDNA等が検出可能なものにのみ義務を課しているという整理になっている」
→安田:2番目の理由が意味不明。科学的に有意差がなくても表示が義務付けられているケースはいくらでもあるのでは。例えば、野菜の産地が義務付けられているのは、成分に違いがあるのが理由ではないはず。
蓮見課長補佐「社会的検証を監視に取り入れるためには、国際的な合意を得た上でシステムを構築することが必要というお話もございました」「国際的なトレーサビリティー制度もなく、国内の事業者が書類等の真正性が確認できないという状況下で取引に影響を与えないか」
→安田:現在でも「遺伝子組み換えでない」の表示が一部できているのは、書類等の真正性を信頼しているからではないのか。話が矛盾してはいないか。
→安田:国際的なトレーサビリティ―制度がないなら、猶予期間を設けてそれを構築したらいかがか。
蓮見課長補佐「遺伝子組み換え表示につきましては、30平方センチメートル以下の容器包装の場合は省略できるという規定がありますけれども」
→安田:知らなかった!
夏目委員「3割であっても消費者が表示を求めるということであれば、できるだけ表示の拡大に向けて努力をしていくという方向性は必要なのではないか」
夏目委員「検証を社会的検証にまで広げるかとうかという論点がある。(中略)外国に頼る製品について社会的検証ができるかどうかというのは、ちょっと私にはわかりかねており(中略)科学的な検証と社会的な検証を埋める方法、その隙間を少しでも近づける方法があるのかどうかというところをほかの委員の方にもご意見を出していただけるとありがたい」
立川委員「科学的検証と社会的検証の関係について、もしも可能であれば 、次回にでも事務局のほうからもう少し補足説明などをしていただくと良い(中略)
社会的な検証もトレーサビリティーと日本が採用しているIPハンドリングとはかなり発想が違うものでありますので、IPハンドリングとトレーサビリティーがどのように違うのかということに関しても、補足して認識を共有しておいたほうがこの議論が進むのかなと思います」
→安田:IPハンドリングとトレーサビリティーの違いがよくわからないので、ぜひ詳しく説明していただきたい。委員の間にもわかっていない方はいらっしゃるはず。そのうえで再度の議論が必要。
参考:IPハンドリングhttp://www.greenjapan.co.jp/con_news_idensi_5.htm
今村「一般的に検証できますかという話と、本当にそれは監視で刑事事件として立証できますかということを2段階にちゃんと分けて考えないと、一般的な検証ができるという話と監視ができるという話はイコールではない。ここまでいけば確実に挙げられますよねということができるようなものでないと、実際には取り締まりが難しい」
→どうしてイコールでないのかが素人にはわかりかねる。納入元などをたどっていって調査するという方法もあるのではないか。今村氏がやっていらっしゃる「監視の業務」というものがどういうものなのか、市場に出回る食品の中からどの程度の割合で検査をするのか、何人体制で「監視」しているのかなど、もっと具体的な詳しい説明がないと、「取り締まりが難しい」理由がよくわからない。他の委員もわからないのではないか。
松岡「穀物のような状態で、原料そのもので入るわけではなく、既に加工されたものが入ってくることが現状としてはどんどん多くなりますし、輸入相手国も東南アジアから入ってくるということが日本の場合は非常に多いということを考えると、社会的検証というのもなかなか困難なところがあると思う」
→安田:加工されて入ってくるものとは、具体的にどんなものが多いのか。遺伝子組み換え作物の最大の用途は飼料、次は油だが、油は原料を輸入して日本で精製する場合が多いのだから、それに表示ができるようになるだけでもひとつの進展だとは思うが。
→安田:東南アジアだと信頼性は低い、というのは、イメージだけでなく実際にそうなのか。
神林委員「科学的検証、社会的検証というのは非常に重要なポイントではある」「消費者の立場で物事を考えたときに、遺伝子組換え農産物を使っているか使っていないか、それを知りたいのですという気持ちは非常に大切にしなければいけない(中略)まずは表示義務対象品目である8品目を全部表示しなければいけない、あるいは表示をしたとした場合に、何か解決方法はないのかどうかという議論をすべきなのではないか。(中略)このままだと、多分今の制度の延長線で終わってしまうような気がするものですから、そうするとこの委員会で検討する意味が余りない(中略)食用油とかしょうゆといったものに表示をするとした場合にどういう部分が問題になるのか、まさにここに書いてあることなのでしょうけれども、そういう感度でもう一回検討するといいますか、議論をしないと意味がない」
→安田:食用油や醤油は原料を輸入して国内で加工しているものが多いだろうから、原料の確認は難しくないのではないか。
澤木委員「生協さんとかイオンさんでは(中略)表示義務のないものについて、枠外ですけれども書かれたりしております(中略)ガイドライン等で、事業者さんには枠外にでもなるべく表示していただくのも一案かと思います」
松岡委員「表示を求める人たちというのは(中略)遺伝子組み換えの食品でないというほうを選びたい(中略)そうすると、遺伝子組み換えでないということがはっきりわかるような表示制度というのも考えていいのではないかと思います。今は5%云々とか、そういう複雑な制度が入り組んでいるわけですけれども、もっと明確にこれは使っていませんというのを宣言して、ただしそれは認証制度のようなものできちんと担保し、5%以下なんていう曖昧ではなく、もっと低い数値のところをボーダーラインにしてやるということを考えていくことが必要ではないかなと思います。現在ある表示制度そのものは、わたしは残しておいていいと思うのですが…」
近藤委員「検証できないところまで対象を広げた(中略)ときに(中略)わざと表示しないという業者が出てくるということも想定される(中略)そうすると(中略)消費者にとっても不利益になるとわたしは思うのです」
夏目委員「拡大したときに事後検証ができないために、商品の信頼性が低下したり、偽装表示をする業者が出てくる。これは拡大してもしなくても同じことだと思います。(中略)そういうことが起らないために監視をするのであり、社会的検証もするのだとわたしは思っておりますので、消費者としては拡大するほうのメリットが大きくて、拡大したためのデメリットのほうが大きいとは決して思いません」
今村委員「わたしは基本的には全体に表示すべきだと思っているのです。その中で実際に監視に携わってきた人間として、どこまで不正をただすことができるのかという線で切ると、どうしても検知がないと追い込むことができないでしょうということで、近藤委員もそういう意味でおっしゃっていただいていると思うのですね。
それに対して、そんなにぎちぎち追い込まなくていいですよ、どっちかというと、ちゃんと表示してくれたらみんなで褒めましょうという制度であれば、そんなに厳しい検証を求めないので、そういう二重に、自主認証制度があって規制は規制であってというのは存在し得るのかなと思うのです」
神林委員「実際のところ、私どもも穀物を輸入する際、一部の物についてIPハンドリングを行っています。その場合、証明書を出し、海外の生産者ともきちっと検証したものを輸入しなければいけないので守ってくださいねというような契約を結んだ上で輸入しているわけで、それがどこまで社会的にも信頼を置けるのか、そういったことがほかも含めてやれるのかどうかということだと思います」
「表示の義務化に向けた時間的な余裕さえ確保できれば、海外との間で農家の説得も含めて、契約栽培ができるのではないかと思います」
「あとはそれをどういう形で表示にするか、義務にしてしまうと、証明できなければ犯罪が起きるということは確かにあると思いますので、正しい表示の仕方として、表現も含めてどういう形であれば実施できるのかをセットで考えておく必要があるかなと思います」
湯川座長「皆さんのご意見をお伺いして、基本的には品目を拡大、消費者の知りたいという要望に応じるという意見、それから検証できるかどうか、これは単に社会的検証も含めて頑張ればできるじゃないかというような問題ではなくて、検証できないものに義務を課すと、さまざまな不正表示、監視業務執行上の問題、それから企業のほうにしても、どうせわからないからというような不正が横行するおそれ、それがかえって消費者の不利益につながるのではないかという話も出てきたかと思います。
現状のルールを大きく変えて全ての品目に広げるという話は、委員の先生方のお話しからは出てこなかったかなと座長としては理解します。基本的には現在の制度を維持し、特に科学的な検証が可能になるといった状況の変化があれば表示対象品目に加えていく。さらに、遺伝子組み換えが入っていないのか、いるのか、特に遺伝子組み換えフリーというような消費者のニーズに対しては、これはまた論点4のほうにもかかわってくるかと思いますが、松岡委員からもご意見がありましたように、すべての消費者ではなくある一定の範囲の消費者のニーズにこたえるという意味では、別個の認証制度というやり方、あるいはガイドラインで表示を奨励していくというやり方で対応してはいかがかというようなところかなと思います。
わたしのほうで強引にまとめてしまいましたけれども、委員の方々から再度ご意見をお伺いしたいと思います。
特にないようでしたら、そういう方向で、論点1については基本的に現状の考え方を踏襲することで合意したということにさせていただきたいと思います」
→安田:強引すぎる。委員らは唖然として言葉もなかったのか、よくわからないが、食い下がる委員がいなかったのは残念極まりない。