「楽園ハワイの農薬 ーハワイに住む人々の健康と環境へのリスク」を聞いてのご報告


11月23日は日本消費者連盟会議室にて、「楽園ハワイの農薬 ーハワイに住む人々の健康と環境へのリスク」をテーマにハワイのアシュリー・ルーキンズさんに話を聞きました。
ハワイには冬がなく、1年中農作物を栽培できることから、アグリバイオ企業(=遺伝子組み換え作物を売る会社)各社の栽培試験場が、数多く設けられているといいます。
2014年、カリフォルニア州での遺伝子組み換え作物栽培試験が175か所で行われたのに対し、それよりはるかに狭いハワイでは1381か所で実施されたそうです。

ハワイの女の子s

2010年から2014年のハワイで試験栽培された遺伝子組換え作物をタイプ別に見ると、約4分の3が除草剤耐性となっています。
近年遺伝子組み換え企業がよく主張する、世界の飢餓を救うとか、消費者のメリットになるといった大義名分との矛盾が見て取れます。
そもそもは彼らは化学薬品会社であり、自社の除草剤を売るのが最大の目的だということが、ここに露呈しているといえるでしょう。

試験圃場でも当然大量の除草剤やその他の農薬が使用されます。
多い時には、1日に16回も(おそらくそれぞれ別の種類の)農薬が散布されることもあるそうです。
それがハワイの人々の健康をじわじわとむしばんでいます。

ハワイの学校で近隣の試験場に農薬が散布された後、子どもや先生が頭痛、めまい、嘔吐を訴えるといった事件が少なくとも3件は起こっています。
そうした急性の症状以上に、微量の暴露による慢性症状はさらに深刻です。

妊婦が大量の農薬に被曝することにより、ハワイでは流産、死産、逆子などが増えており、出生異常は全米平均の10倍。
生まれた子供には知能指数の低下、ADHD(注意欠陥多動症候群)や自閉症の多発もみられます。
また、子どもが農薬に曝されることにより、頻繁に鼻血を出したり、喘息や呼吸器疾患、白血病、精神機能低などの症状が起こっているといいます。
農家自身は農薬に被曝することで、精子数の減少、非ホジキンリンパ腫、パーキンソン病などが増えることが明らかになっています。

農薬散布を行政が制限しようとすると、企業が反対の訴えを起こし「農薬の危険性はまだ証明されていない。もっと研究してからでないと」などと言い出すのが常です。
本来は企業側に安全を証明する責任があるはずなのに、逆に消費者側が危険性を証明しなければなりません。
だから、アメリカではEUと違い予防原則に則った措置が取れません。
しかし、アシュリー・ルーキンズ氏は農薬被曝と健康被害に関する査読付きの論文を5年間で500本以上も読んだといいます。
「もう証拠は十分にあります。これ以上何を待てというのでしょう」と彼女は問います。

ハワイ州の3つの郡で、こうした現状を打開するための法律が制定されましたが、遺伝子組み換え企業はそれを不服とし、無効にするための裁判を起こしており、現在も係争中となっています。
カウアイ島では、どんな農薬をいつ散布するのかを事前に知らせること、また学校や住宅などと試験圃場との間に緩衝地帯を設けることを義務付ける法律が制定されました。
ハワイ島では、これから新しく遺伝子組み換え作物の栽培試験をすることを禁止する法律が制定されました。
マウイ島では、安全だと証明できるまで遺伝子組み換え作物の栽培を禁じる法律が制定されました。
しかし、一審ではすべて、州の法律以上に厳しい法律を独自に郡が課すことはできない、という理由で敗訴したのだといいます。

上告の結果は半年以内には出るとみられ、全米がその結果に注目しています。