遺伝子組み換え表示制度に関する検討会第6回が2017.11.17、合同庁舎4号館にて開催されました。
前回の第5回検討会で「表示義務範囲の拡大なし」とのとりまとめが行われたことに対し、さまざまな形で抗議と撤回要求を行ってきましたが、「そういう方向性を示したというだけであり、最終結論ではない」との説明がまず座長からありました。
近藤委員からは、コーンフレークの遺伝子の検出状況についての説明がありました。
これまでの話では、検査技術が上がったため、今までは検出不能とされてきたコーンフレークからも、「組み替えられたDNA」が検出できるようになった、という話でした。そのため、コーンフレークには新たに表示義務を課すべきなのではないか、という話が出ていたのです。
ところが近藤委員からの説明によると、去年検査したときには検出できたのに、今年また確認のため検査したら、検出できたりできなかったりで安定しない、とのこと。再現性を確かめるため、よその検査機関2か所にも頼んでみたが、ほとんど検出できなかった、というお粗末な話でした。
去年ちゃんと検出できたという話は一体なんだったんでしょう。疑問の残るところですが、「加熱の条件がちょっと変わっただけでもそういうことはあり得ます」と擁護?する委員もいました。こうした細かな専門的な話は素人には反論のしようがありません。
また、近藤委員からは実験データなどを示した配布用資料はなく、パワーポイントで投影し、撮影は禁止というものでした。実験対象になったコーンフレークのブランドも、よその検査機関の名前もすべて伏せてあり、AとかBとかの表示しかありません。なぜ撮影禁止にする必要があるのか理解に苦しみます。
立川委員からは、「科学的検証と社会的検証、トレービリティとIPハンドリングの違い」などについての詳しい資料と説明があり、これはとても参考になる有意義なものでした。
資料はこちらからご覧いただけるようになっています。
現行制度では「遺伝子組み換え」と表示するためにもIPハンドリング(分別流通管理)が必要とされている、ということは初めて知りました。現実には遺伝子組み換えの穀物を、手間のかかるIPハンドリングで管理している輸入業者はありませんので、「遺伝子組み換えでない」か「遺伝子組み換え不分別」の2種類しか流通していないわけです。
また、EUでは遺伝子組み換えのものがどこから来たのか、経路をたどれるようになっているのに対し、
日本では非遺伝子組み換えであると確認したものをどんどん一緒にしていく(コップからプールへ移し替えるように)ため、そのプールから遺伝子組み換えのものが発見されても、それがどのコップから来たのか(どの農場から来たのか)たどることはできない、という違いがあることがわかりました。
油や醤油、コーンフレークなどは科学的認証ができないことが表示義務が課されない理由とされているわけですが、その一方で有機認証は科学的認証ではなく、社会的認証に頼って成立しているわけで、遺伝子組み換えだけが科学的認証に頼らなければならないというのはおかしいではないか、とわたしは思ってきましたし、その意見を各所に送ってきました。
それに対して立川委員からは
〇また義務表示対象の品目のうち、DNA検知ができる製品とできない製品間で、露見可能性に相違が生じる(非対称性)。
〇DNA検知できる製品に関しては、店頭販売製品を検査することで判明するのに対して、DNA検知できない製品に関しては、店頭 販売製品では違反が判明せず、立ち入り検査によるIP文書確認 が必要である。(モラルハザードが生じやすい)。
〇 原料原産地表示や有機食品表示も、科学的検証ではなく社会的検証のみで実施されているが、同一制度内で上記のような非対称性は存在しない。
そのためにDNAが検出できないものに表示義務を課すと、業者間に不公平が生じる、というのが個人的なお考えだそうです。
わたしは必ずしもその意見に賛同するわけではありませんが、そういう意見もあるということは理解することができます。立川委員の丁寧な説明には誠実さが感じられました。
わたしは前回の検討会で本当は説明すべきであるのに、されなかった事柄として、上記の立川委員の件と、もう1件、今回の検討会での説明を要求してきました。
そのもう1件とは前回今村委員が「一般的な検証と、監視できるというレベルはイコールではない」と述べられた理由は何なのか、監視業務の詳細とともに明らかにしてほしい、ということです。しかし、これに関する今村委員からの説明は何もありませんでした。説明しないということは、納得させられるような理由は本当はないのではないか、専門家の立場を利用して素人を煙に巻こうとしているのではないか、という疑念が湧いてきます。
最後は「遺伝子組み換え不分別」という消費者にとってわかりにくい表現をなんとかできないのか、という議論になりました。
考え方1
「遺伝子組み換えが混じっている可能性があります」など、「遺伝子組み換え不分別」であることを表す別の表現を考える。
考え方2
「遺伝子組み換えでない」と「遺伝子組み換え」の2種類に集約してしまう。
つまり、IPハンドリングによって「遺伝子組み換えでない」と確認されたもの以外は、すべて「遺伝子組み換え」と表示する。
という考え方の例が消費者庁の事務局からは示されました。
これに対し、夏目委員から「遺伝子組み換え不分別というのは、遺伝子組み換えのものかもしれないし、そうでないかもしれないし、何が入っているかわからないということで、事業者として自分が売っているものが何かわからない、というのは無責任なのではないか」という主旨の発言がありました。
湯川座長が「確かにその意見はごもっとも。そこのところをもっと議論しましょう」と促していたのは意外でした。少なくとも前回よりは丁寧な議論の運びが感じられました。
「遺伝子組み換え不分別のものには、遺伝子組み換えが0%のものから100%のものまである。それを一律に遺伝子組み換えと表示してしまうことはいかがなものか」という意見が今村委員から?出ましたが、「不分別」で遺伝子組み換えが0%などということが現実にあるでしょうか? 遺伝子組み換えのものよりも高く売ることが可能な非遺伝子組み換えの作物を、遺伝子組み換えのものと同じ値段で売る農家はほとんどいないでしょう。輸入のとうもろこしや大豆には圧倒的に遺伝子組み換えのものが多いこと、非遺伝子組み換えのものは特別な需要があり、IPハンドリングによって分別流通されることが多いこと、などの事情を考えれば、船倉全体に0%などということはあり得ないことでしょう。わたしとしては、この意見は詭弁であるように感じました。
また、いつも業者側の意見を強く主張される武石委員からは「遺伝子組み換えでないものも混じっているのに、それに遺伝子組み換えと表示するのは、消費者を誤認させることになる」と、あたかも消費者の知る権利を慮っているかのような意見が出されましたが、これもおかしな話です。
消費者が表示を求めるのは「遺伝子組み換えでない」ものを選びたいから。一体どこに「遺伝子組み換え」を積極的に選びたい消費者がいるというのでしょう。「遺伝子組み換え」と書いてあるものに、多少「遺伝子組み換えでない」ものが混じっていても、不満に思う消費者はどこにも存在しないはずです。
こうした事情を無視して、へ理屈ばかりこねる委員たちの議論には辟易とさせられます。
結局結論はまとまらないまま、次回へと持ち越されました。
次回は12/18(月)14:00~開催されます。
議事録はそのうちに、こちらにアップされる予定です。