ゲノム編集、合成生物学など、従来の遺伝子組み換えに替わる、次世代型の遺伝子操作技術が近年急速に発達していますが、「RNA干渉」技術もそのひとつです。
この技術を使ってアメリカのJ.R.シンプロット社が開発した「アクリルアミド産生低減及び打撲黒斑低減ジャガイモ」は、アメリカでは既に流通しており、日本でも今年、食品安全委員会が安全との評価を下し、厚労省が官報告示しています。
アクリルアミドはジャガイモを高温で加熱した際にできる発がん性物質で、この新種のジャガイモは、この発がん性物質の産生が少なく、またぶつけても黒くなりにくいというものです。
こうした新しいタイプの遺伝子操作食品が、従来の遺伝子組み換え食品同様、部分的にでも表示義務の対象になるかどうか、わたしたちは不安を感じてきました。
このたび、NGO「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」が消費者庁に対し、公開質問状を送り、
1.ゲノム編集技術の応用生物をGMO(遺伝子組み換え生物)と位置づけ、その応用食品を表示の対象とするとお考えですか。
2.RNA干渉法の応用生物をGMOと位置づけ、その応用食品を表示の対象とするとおかんがえですか。
という質問をぶつけたところ、7月31日に電話で以下のように回答があったとのことです。
「我が国では、安全性が確認されていないGM食品の輸入・販売は禁止されています。このことを前提に、我が国の遺伝子組み換え食品表示制度では、安全性の確認された遺伝子組み換え食品の表示を義務付けています。ゲノム編集技術やRNA干渉法などの新たな遺伝子組み換え技術を用いて開発された食品を義務表示の対象にするかどうかにつきましては、これらの食品の安全性が確認されたあとに判断することになります。8作物以外に新たな作物がでてきた場合には、安全性が確認された後、表示をどうするかを検討します。
シンプロット社のジャガイモについては、ジャガイモの表示制度があるので、それに基づいて表示をします」 消費者庁食品表示企画課 松尾さん
とりあえず、シンプロット社のジャガイモには表示される、ということですので、これは消費者にとってささやかな朗報といえるでしょう。
ただしジャガイモで表示義務の対象になるのは、ポテトチップなどのスナック菓子や、冷凍のカットされたジャガイモなど。外食産業のフライドポテトに表示義務はありませんので注意が必要です。
(生のジャガイモは害虫予防対策のため輸入が禁止されていますので大丈夫です)
マクドナルドなどのファーストフード店や、大手ファミリーレストランなどに、「シンプロット社のジャガイモを使わないで!」と呼びかけたいものですね。そのための作戦も後日準備ができ次第公表します。
※RNA干渉とは
特定のmRNA(メッセンジャーRNA)にぴったり重なる短いRNAを人工的に作り出して細胞に入れることで、特定の遺伝子の働きを止める技術。従来の遺伝子組み換えはもちろん、ゲノム編集に比べても容易な技術であることから、応用が広がっています。