GM表示制度検討会の委員に意見を送りました!


消費者庁が「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」を開いたことを受け、委員の方々に意見を送ろう!と、先日呼びかけを行いました。
詳細は前回の記事→→「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」委員に意見を送ろう!

やはりまずは消費者代表として選ばれたと思われる委員の方々に思うところをお伝えしようと思い、6/10に女性委員3人に手紙をお送りしました。
それぞれの方のご発言に対して触れた部分や挨拶などを除き、わたしの送った意見の骨子を下記に挙げておきます。

すべてのGM食品に表示を!消費者庁ロゴ入り.-2-ai

●消費者の「知る権利」が保証される表示制度に
消費者基本法には、消費者にとって必要な情報が提供されること、商品について合理的な選択の機会が確保されることが、消費者の権利である、と明記されています。一方で、現在の表示制度は夏目さまご指摘のとおり、複雑で紛らわしく、多くの消費者に誤解をもたらすものです。消費者の権利をきちんと保証する表示制度が求められます。
参考:消費者基本法
(基本理念)
第二条  消費者の利益の擁護及び増進に関する総合的な施策(以下「消費者政策」という。)の推進は、国民の消費生活における基本的な需要が満たされ、その健全な生活環境が確保される中で、消費者の安全が確保され、商品及び役務について消費者の自主的かつ合理的な選択の機会が確保され、消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映され、並びに消費者に被害が生じた場合には適切かつ迅速に救済されることが消費者の権利であることを尊重するとともに、消費者が自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動することができるよう消費者の自立を支援することを基本として行われなければならない。

●特別に学習の機会がなくてもわかるような表示を
表示義務のある食品と表示義務のない食品の両方が存在するという現状の表示制度を、国民全員がじっくりと学ぶ機会などどこにもありません。本当に知る権利を保証するためには、何も知らない人でも、文字さえ読めればわかるような表示にしなければ意味がありません。

●遺伝子組み換え作物の安全性への懸念は高まっている、表示の重要性も
遺伝子組み換え食品は安全だと政府は言いますが、遺伝子組み換え品種の大半を占める除草剤耐性品種には、必ず除草剤が残留しています。代表的な除草剤であるラウンドアップの主成分グリホサートは、2015年になってからWHOの外部組織である国際ガン研究機関から発がん性物質の認定を受けました。そのことも考え合わせると、安全性の議論も、本来はもう一度新たに検討し直されるべきではないでしょうか。
またインドでは害虫抵抗性(殺虫毒素であるBTたんぱくを含む)遺伝子組み換え綿の収穫後の茎や葉を食べて、水牛や羊が死ぬことが確認されています。
安全性の議論は厚労省など別の場でされるべきことだとは思いますが、それが見直される気配がない現状では、消費者が自衛策を取り、表示を見て選択することの重要性はさらに高まっているといえるでしょう。

●「組み換えDNAやそれによって生成したタンパク質が含まれない食品」にも表示を
除草剤の主成分グリホサートは、遺伝子組み換え作物から抽出した油や、遺伝子組み換え飼料を食べた家畜の肉などからも検出されると言われます。それを避けたい人にとっては、「組み換えDNAやそれによって生成したタンパク質が含まれる」かどうかはどうでもいいことです。油やその加工品、液糖・果糖などの糖類、水飴、みりん風調味料、醸造酢、醤油、醸造用アルコール、コーンフレーク、デキストリンなど、またGM飼料を与えられた畜産物にも(飼料:遺伝子組み換え含む)のような表示を求めます。

●飼料にも表示を
現在はGM飼料を与えられた畜産物はもちろん、飼料そのものにさえ表示義務がありません。そのため、畜産農家の中には、自分が与えている餌が遺伝子組み換えなのかどうかの自覚もないままに給餌している農家も存在します。それがわからなければ、畜産物にも表示のしようがありません。まずは飼料に表示を義務付けることが大切です。

●遺伝子組み換えを食べたくない理由はさまざま
遺伝子組み換え作物を食べたくないと思う人の多くは安全性に懸念を持っていますが、食べたくない人の理由はそれだけではありません。

◎食と農を支配しようとするモンサント社への反感、食料主権を守るため
遺伝子組み換え作物の栽培が広がっているアメリカやカナダでは、非遺伝子組み換えの作物を栽培しようと思っていても、意図せぬ交雑によって遺伝子組み換え作物が畑に生えてしまう、という事態が各地で起きています。農家はそれによって迷惑を被っているにもかかわらず、逆に特許権侵害でモンサント社から訴えられるという理不尽極まりない目に遭っています。訴えられ、破産したくないがために、モンサント社と契約して不本意ながら遺伝子組み換え作物を栽培せざるを得ない状況に追い込まれる農家もいます。何を栽培するか、何を食べるかを決める自由=「食料主権」を奪うのが遺伝子組み換え作物であり、決して受け入れることはできない、と思っている人たちがいます。そうした人たちにとっては、自分たちの信念を通すためには、食べない権利、選択の権利が保証されることは大変に重要なことです。

◎環境問題への懸念
遺伝子組み換え作物の花粉が一旦環境中に飛散してしまうと、在来種との交雑が起り、それを元に戻すことは不可能になってしまいます。トウモロコシの原産地メキシコでは、遺伝子組み換えトウモロコシの栽培を認めていないにもかかわらず、こぼれ落ちた種から自生したとうもろこしが花粉を飛ばし、貴重な原種が交雑によって失われる危機にさらされています。在来種を危機にさらすという点で、遺伝子組み換え作物は大きな問題を持っています。
また、除草剤によって水鳥が死んだり、空中散布によって畑周辺の住民に健康被害が出るなどの環境汚染が特に南米で深刻化しています。そうした環境汚染の加害者となることを避けるためにも、食べたくない、という人たちもいるのです。

●畜産物にも表示を
遺伝子組み換え作物の最大の用途は家畜飼料です。ですので、上記のような理由で遺伝子組み換え作物を食べたくない、輸入を減らしたい、栽培を減らしたい、と願う人間にとっては、畜産物への表示は非常に重要です。肉、卵、乳製品などに(飼料:遺伝子組み換えを含む)あるいは(飼料:遺伝子組み換えでない)といった表示がされるようになれば、畜産農家の側にも、遺伝子組み換え飼料を避けようという動きが出てくることが期待されるからです。

●検出できるかどうかで表示義務を分けるのはおかしい
たとえば有機農産物の認証を取るためには、どんな資材を使ったかなどすべての記録を残すことが義務付けられており、認証機関はそうした書類を見たり、また倉庫などの現場をチェックしたりすることで、化学合成農薬や化学肥料を使っていないかどうかを判断します。同様に、分別流通した非遺伝子組み換え作物を使っているか否かは書類などで確認できるはず。トレーサビリティシステムによって、原料が遺伝子組み換えでないことを証明できなければ「遺伝子組み換え」と表記することを義務付けるべきです。時折抜き打ちで工場監査を行い、原料を検査してもよいでしょう。それらの対策を講じれば、最終製品から組み換え遺伝子やそれによって生成したタンパク質を検出できるかどうかはどうでもいいことです。

●「主な原材料」以外にも表示を
現状では原材料の上位3番目以内で、かつ全重量に占める割合が5%以上のもののみに表示義務が課されることになっていますが、この枠も取り払って、すべての食品に表示を求めます。

●添加物にも表示を
遺伝子組み換え作物から抽出される添加物(大豆からレシチン、ビタミンEなど、とうもろこしからキシリトール、トレハロースなど)と、遺伝子組み換え微生物に直接産生させる添加物(アスパルテーム、ビタミンC、各種アミノ酸等)とがありますが、どちらも現在は表示義務がありません。
とうもろこしからつくる加工でんぷんも添加物という扱いになっており、遺伝子組み換えとうもろこしからつくられていても表示義務がありません。一般に添加物はごくわずか、たとえば0.1%以下しか入っていないというイメージがありますが、実際には食品よりも添加物のほうが重量が多いというケースも中にはあるようです(たとえば、抹茶風味のお菓子で、抹茶の分量よりも着色料のほうが多いなど)。こうした事情を考えると、食品には表示義務を設けても、添加物には表示義務を設ける必要がない、とする合理的な理由はありません。添加物にも食品同様に表示義務付けを求めます。

●原材料表示のスペースの問題は工夫次第で解決できる
表示の場所が限られるという問題については「遺伝子組み換え(以下 )」のような表記を採ることで解決できるかと思います。

例:原材料:小麦粉、砂糖、植物油(遺伝子組み換え≪以下 ≫)、でんぷん( )、ビタミンC( )

●ゲノム編集など新しいタイプの遺伝子操作技術で開発された食品にも表示を
現在、ゲノム編集、エピゲノム編集、RNA干渉など、従来の遺伝子組み換えとは別の、次世代型ともいえる遺伝子操作技術(新育種技術[New Plant Breeding Techniques]とも呼ばれます)が急速なスピードで実用化されつつあります。
2年前のNHKのテレビ番組では近畿大学がゲノム編集でマダイの改変に取り組んでおり、2年後には市場に出せる見込みだ、とのことでした。つまりこのままでは年内にもゲノム編集の魚が市場に出回り、何の表示もないままわたしたちの食卓にのぼるかもしれないということです。
これに表示義務を課すことはまさに喫緊の課題です。
ゲノム編集はこれまでの遺伝子組み換えと比べれば安全性は高いと言われてはいますが、それでも同様の問題の可能性を指摘する声があります。

参考:ゲノム編集に関する科学誌(Web版)の反応
◎「エコロジスト」誌」
これまでGM技術で指摘されてきた問題はそのままである。遺伝子操作が、他の遺伝子の働きや、遺伝子間の相互作用に影響を及ぼす可能性は高い。そのことが毒性を増幅するなど食の安全性に悪影響をもたらしたり、栄養分を低下させたり、新たなアレルゲンをもたらす可能性がある。

◎「インディペンデント・サイエンス・ニュース」誌
ゲノム編集技術の安全神話を批判する。目的としたターゲット以外にも作用することがあり得る(オフターゲット)。ゲノム編集技術は精密に制御されているわけではない。DNAの機能の変更は予測は不可能である。

DNAの働きは微妙な調和のもとに成り立っており、その一部が変更されることで、予想もしない突然変異などが起こり得る可能性は否定しきれません。
人類がこれまでの歴史の中で何百年と食べてきて安全性が確認されている食物とは、何らかの違いが存在する可能性があります。仮に安全性に問題がなくても、人の手で遺伝子を改変することを生命への冒涜と感じたり、不自然なものを食べたくない、と思う消費者もいます。そうした個々人の意思は尊重されるべきでしょう。消費者基本法の理念に照らし、消費者の知る権利、選択の権利は保証されるべきです。これらの食品にもすべて、表示を義務づけてくださいますようお願い致します。

例: 米(ゲノム編集)
例: じゃがいも(RNA干渉)

なお、農水省などは「新育種技術」(New Plant Breeding Techniques、略称NPBT)という言葉を使いたいようですが、表示を

例: 米(新育種技術)
例: じゃがいも(新育種技術)

のようにすることには反対です。
「育種」という言葉は、従来の交配による育種を連想させます。現実には高度に人工的な処理を行うわけで、その実態と言葉の持つ牧歌的なイメージとの間にギャップがあり過ぎます。
「ゲノム編集」と表示すれば、その技術について知らない人も「自分にはよくわからない人工的な操作がされているようだ」と漠然と感じることができるでしょう。こうした言葉の持つ雰囲気、イメージの違いは重要です。

どうか以上のような意見があることをご理解のうえ、消費者代表として検討会を牽引してくださることを心より期待しております。

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自分も意見を送りたい!と思う方、委員の方々のお名前や所属、住所等を挙げておきましたので、前回の記事をご覧になり、ぜひ意見を送ってみてくださいね。

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