「アメリカでがんばるママがやってくる! 子どもたちの食べものを変えよう」ご報告


「ワークショップ:アメリカでがんばるママがやってくる! 子どもたちの食べものを変えよう」ご報告
アメリカでは多くのお母さんたちが、子どもたちを遺伝子組み換え食品から守ろう、と立ち上がっています。その代表がゼン・ハニーカットさん。“マムズ・アクロス・アメリカ”という団体の創始者です。昨日はゼンさんを渋谷のウィメンズプラザにお迎えし、その活動についてお話を伺うことができました。

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現代の子どもたちの間ではアレルギーが激増しています。ゼンさんの3人の子どもたちもその例外ではなく、小麦、乳製品、卵、ナッツ類、カラギーナン(増粘剤)など、多くのアレルギーを持っていました。感謝祭のディナーに親戚が持ってきたケーキにピーカンナッツが入っていたために、子どもの1人がアナフィキラシーショックを起こし、皮膚が真っ赤になり、呼吸困難で生死の境をさまよったこともあったといいます。
食べものによって子どもたちが命を落とすこともあり得る、というのが、悲しいかな、現代の常識となりつつあります。

しかし、そこには原因があるはずです。「子どもを思う母親はFBI以上の調査能力を発揮する」とアメリカでは言われるとか。ゼンさんも食べものについて調べるうち、アメリカの加工食品の85%に遺伝子組み換え食品が含まれているということを知り、それが原因ではないかと思うようになりました。
そして、子どもたちとも相談し、食事から遺伝子組み換え食品を排除するようにしたところ、子どもたちの症状はみるみる改善されていきました。アレルギーの度合いを示す数値は19から0.2まで激減したといいます。

遺伝子組み換えの推進派は遺伝子組み換え食品は安全だ、それは科学的に証明されている、データもちゃんとある、などと言います。でも、わたしたちには実体験によって得られた確信があるのだから、それを客観的に証明する証拠を集めよう、とゼンさんは思い立ちました。そして2014年、子どもたちの尿を検査してみたところ、2番目の息子から8.7㎍/ℓものグリホサートが検出されたのです(グリホサートは除草剤耐性遺伝子組み換え作物にかけられる除草剤の主成分)。これはヨーロッパ人の平均的な数値の8倍にもなります。1人目の息子や3人目の息子からは出なかったグリホサートが、どうして2番目の息子からは検出されたのか……ゼンさんはそこで、2番目の息子だけは小麦を食べていたからだ、と気づきました。アメリカでは小麦が早く乾燥するように、収穫直前の小麦に除草剤ラウンドアップ(主成分グリホサート)を噴霧するのが一般的であるため、小麦には多量のグリホサートが残留しているのです。
この2番目の息子は当時自閉症の症状があり、成績は落ち、人を叩いたり、騒いだり、気違いじみた行動を取ることが多かったため、病院に行って相談したところ、リーキーガット(腸の粘膜が緩んでしまっている状態)で、腸内の真菌の数値も高く、それが脳に炎症を引き起こしているかもしれない、と言われたといいます。

グリホサートのせいだ、と思ったゼンさんは、息子の食事をオーガニックに切り替え、ザワークラウトなどの発酵食品を食べさせ、また真菌を除去する治療を受けさせました。
そうしたところ、息子は1~2年で見違えるように改善し、成績はすべて“A”評価の優秀さとなり、かつて自閉症だったなどとはもう誰にもわからないほどになったといいます。

また、母乳中のグリホサートの検査も行いました。マムズ・アクロス・アメリカのメンバーは食事に気を付けているため、ほとんどの人の母乳からはグリホサートは検出されませんでしたが、それでも外食が多いという2人のメンバーからは76㎍/ℓ 、99㎍/ℓものグリホサートが検出されました。また、メンバーの友達で普通の食事をしている人からは166㎍/ℓものグリホサートが検出されたのです。

それを知ってゼンさんは激怒しました。なぜなら、モンサント社は「グリホサートは摂取してもその日のうちに尿とともに排出される。人体には残留しない」という研究結果を公表し、それに基づいてグリホサートの使用が許可されていたからです。その前提が崩れたのですから、EPAはグリホサートをリコール(回収)すべきではありませんか。ゼンさんたちは「EPA(アメリカ環境保護局)はグリホサートをリコールすべき!と電話しよう」という緊急キャンペーンを立ち上げました。フェイスブックページにEPAの電話番号を載せ、母の日の前の5日間、集中的に電話するように呼び掛けたところ、それに応じて1万人もの母親たちが、EPAに抗議の電話をかけたのです。その週の終わり頃には遂に音を上げたEPAの職員がゼンさんのところに電話をかけてきました。「お願いだから電話をやめさせてください。わたしたちにも仕事があるんですよ」
「あなたの仕事はグリホサートをリコールすることでしょう」と答えたゼンさん。次の州にEPAと話し合いの機会を持つことで合意しました。ゼンさんは食の安全のために活動している他のNGOなどに声をかけ、医師や弁護士を含む11人ものメンバーを集めて話し合いに臨みました。

「わたしたちには(グリホサートは人体に蓄積しない、害はないという)しっかりした科学的なデータがあります」とEPA側は言います。
「わたしたちにも(グリホサートは人体に蓄積する、危険であるという)科学的な裏付けがあるんです」とゼンさんは言い返しました。「あなた方は実験した、と言いますが、それはネズミを使った実験だけじゃないんですか? 人間や、人間の子どもを使って実験したんですか?」と聞くと
「そんな倫理に反すること、できるわけないじゃないですか」とEPAは答えたといいます(!)。
「じゃあ、それをわたしたちが食べるのは、倫理に反していないとでも言うんですか!?」ゼンさんが呆れ返るのも無理はありません。
EPA側も自らの矛盾を認めざるを得なかったのでしょう。当時はグリホサートの認可の更新の時期に当たり、なんの問題もなく15年間延長されると見られていたグリホサートの認可延長は、保留とされました。ゼンさんが呼びかけ、母親たちが電話をした、それによって成し遂げられた前代未聞の快挙です。

ゼンさんを囲んで

ワークショップの終了後、少人数でゼンさんを囲むランチタイムの最中にも、ゼンさんがモンサントの株主総会に乗り込んでいった武勇伝などを伺いました。
株主総会には1株でも持っていれば出席は可能です。ゼンさんは何千ドルか払ってプロキシ(投票によって可否を決めるような提案)ができる権利を手に入れ、株主総会の諮問委員会に生産者と医者を入れるよう提案を行いました(会社は必ずしも諮問委員会の意見に従う義務があるわけではないようですが)。通常、こうした外部の株主の提案は5%から10%の同意しか得られず、実現することはほとんどないそうですが、ゼンさんの提案は53%の同意を得て可決されたのでした。
「モンサントのような大きな会社を経営している社長は立派な方だと思います」社長と話す機会を得たゼンさんは言いました。「この大きな会社を方向転換させることができたら、社長は今以上にすばらしい方だとして世間の称賛を浴びるでしょう」それを聞いた社長の目がキラっと光って一瞬心が動いた様子が見えた、などという話も印象深いものでした。

「母親は、世間の信頼を得やすいのです。母親にとっては子どもが何よりも大切。それ以外、なんの利害関係も持っていないから。そして母親たちの勢いは誰にも止められない」というゼンさん。本当に“Unstoppable”(止められない)なパワーを感じさせてくれる方でした。

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日本でも、遺伝子組み換えにNO! そして農薬にNO! の声を広げるために、グリホサートの検査なども行いたいと思っています。みんなでがんばりましょう♪