現在、遺伝子組み換え技術を使ってつくられた食品添加物は、食品安全委員会の意見を聞き、厚労省が安全性審査を行うことになっています。ところが、このうち「セルフクローニング」(組み込むDNAと組み込まれる宿主が分類学上同一種に属するもの=種の壁を超えない遺伝子組み換え)と、「ナチュラルオカレンス」(組み換え体が自然界に存在する微生物と同等の遺伝子構成であるもの=自然界でも遺伝子の交換が起こりうるもの)に該当する食品添加物に関しては、「安全性評価の対象ではない」とされ、審査の対象から外されようとしています。
「セルフクローニング」や「ナチュラルオカレンス」に該当するものであっても、実際に遺伝子組み換え技術によってつくられていることに変わりはありません。遺伝子組み換えの危険性は、組み込まれる遺伝子そのものにあるとは限らず、むしろそれ以外の要素による部分のほうが大きいと考えられます。目的の遺伝子と同時に導入されるプロモーターが、さまざまな遺伝子を起動させ、予想外の有害な物質を作り出す可能性があることが指摘されています。そうした有害物質が不純物として最終製品に残る可能性は排除できません。
そうした不純物が原因で起きたと考えられているのが、1989年のトリプトファン事件です。この遺伝子組み換えサプリメントを摂取した人の中から「好酸球増多筋痛症候群」による死者が38人も出て、1000人以上に障害が残るという非常に大規模な薬害事件となりました。被害者が昭和電工製の一時期のロットに集中していたため、昭和電工の精製のずさんさによる不純物が原因と考えられています。
今、日本ではヒトパピローマウイルスワクチン(通称子宮頸がんワクチン)の副反応被害者が、線維筋痛症のような全身の激しい痛みやけいれん、筋力低下による歩行不能、各種の自己免疫疾患、記憶障害などで悲痛な叫びをあげていますが、このワクチンもまた遺伝子組み換え技術によってつくられています。さらに、副反応被害者が多く出ているロットとそうでないものがあることが調査によって明らかになりつつあります。線維筋痛症と好酸球増多筋痛症候群は、臨床学的にも血清学的にも類似性を持つことが専門家の間で指摘されているといいます。このような事実を考えあわせると、ヒトパピローマウイルスによる副反応も、遺伝子組み換え技術による不純物が一因である、という可能性を否定しきれないのではないでしょうか。
遺伝子組み換え技術を利用した食品や添加物には、このような危険が起こり得るということを踏まえたうえで、安全性の審査はそれぞれの添加物ごとに厳格に行われるべきではないでしょうか。そうでなければ食の安全性は守られません。
遺伝子組み換えのワクチンにも、遺伝子組み換えの添加物にも表示義務はなく、消費者がそれと気づくことはほとんどありません。しかし、現在では少なくとも、いざ調べようと思えば、そのワクチンが、あるいは添加物が、遺伝子組み換え技術によってつくられているのかどうかを調べられるようになっています。
これは何か問題が起こったとき、その原因を究明する手がかりを与えてくれるものとなり得ます。セルフクローニングとナチュラルオカレンスに該当するものが安全性審査の対象から外されるということは、それが厚労省のリストに載ることもなくなり、どの添加物が遺伝子組み換え技術によってつくられているのか、消費者が知る手立てはまったくなくなってしまうということをも意味します。
このような規制緩和によって恩恵を被るのは事業者や監督省庁だけであり、消費者の安全性や知る権利はないがしろにされている、といえるのではないでしょうか。
この件に関しては、既に国民からのパブリック・コメントの募集も終わっている(2014.4.10~5.9)とのことで、上記の意見を厚生労働省の医薬食品局新開発食品保健対策室に本日、電話で伝えました。今後安全性審査をしない、というのは既定路線となっており、それならせめて、どの添加物が遺伝子組み換えでできているのかをわかるようにリスト化してほしい、と要望しました。