遺伝子組換え食品の表示  その2~産業界のための制度から消費者のための制度へ


日本の遺伝子組換え食品表示は、「遺伝子組換え食品の表示  その1~日本の表示制度」に示したとおり、表示義務のないものがたくさんあります。

末尾の一覧表では表示義務のある品目もたくさんあるように見えるかもしれませんが、量でみればごく一部に過ぎません。

とうもろこしのほぼ全量を日本は輸入していますが、その3/4は家畜飼料となり、残り1/4の多くが油になり、残りが液糖その他の用途に使われます。

つまり、大部分は表示義務のないままに流通しているのが現状なのです。

日本で輸入が許可されている遺伝子組換え作物が8種類あるのに対し、実際に流通しているのは4種類しかありません。とうもろこし、大豆、なたね、綿実です。この4種類の共通点は油の原料になること。すなわち、表示義務を免れること、とも言い換えることができます。

なぜ表示義務を免れるものだけが流通しているのでしょうか。

それは「よく知らないけど、遺伝子組換え食品なんて、うす気味悪い」「食べたくない」とほとんどの消費者が思っているからです。たとえば、遺伝子組換えパパイヤの認可は2011年でしたが、日本人のこうした安全志向を知る流通業界はほとんど取扱いをしませんでした。唯一「コストコ」というアメリカ資本のスーパーが遺伝子組換えパパイヤを販売しましたが、やはり売れなかったせいでしょう、2014年春現在、取扱いは中止、再開する見込みもない、ということです。

(てんさいが流通していない事情はこれとは別で、関税が高いという理由によります。この関税はTPP交渉の行方次第で変わる可能性があります)

つまり、「遺伝子組換え」の表示をする、ということは、事実上、その作物の流通を規制する、あるいは禁止するに近い、大きな影響力を社会に及ぼすということです。

日本の遺伝子組換え表示制度がつくられた2000年頃、なぜこんな抜け道だらけの制度にしたのか、と消費者団体に問われた政府の官僚は、「現状の遺伝子組換え作物の流通に支障を来さないことを最優先に考え、このような制度にした」と本音を語ったそうです。

遺伝子組換え作物の最大の用途が飼料であり、次が油の原料ですので、これが表示義務を免れれば、大勢に影響ない、ということで、もうしわけ程度に一部の食品に表示義務を課したのです。

つまり、消費者として当然の「知る権利」を無視し、遺伝子組換え作物を輸出するアメリカや、安い農作物を輸入して利用したい日本の産業界の都合を最優先に配慮してつくられた制度なのです。

このような表示制度を改め、消費者のための表示制度にしていきたい、と当団体では考えています。

○食肉、油、醤油などを含むすべての遺伝子組換え食品に表示義務を課すこと。

○意図せぬ混入の許容限度は現行の5%から、EUの基準と同じ0.9%まで引き下げること。

○遺伝子組換え技術を利用した添加物にも表示義務を課すこと。

が、当団体の大きな目標です。

しかし、表示をすれば売上が激減することは目に見えているため、国策として遺伝子組換え作物の輸出を推進するアメリカや、国内外で遺伝子組換え研究に従事する学者たち、日本の産業界などは、現状以上の表示は決してさせまいと政府に強力な圧力をかけてくるでしょう。それを考えると、この目標を達成することは決して容易ではないことが予測されます。

しかし、「消費者に対し必要な情報及び教育の機会が提供(中略)されることが消費者の権利であることを尊重する」と、消費者基本法にも定められているとおり、消費者には知りたい情報を知る権利があるのであって、本来は誰もこれを否定することはできないはずです。

消費者として当然の権利を勝ち取るため、遺伝子組換え表示の拡大運動を進めていきたいと、当団体では考えています。

表示拡大の目標が達成されたとき、遺伝子組換え作物の売り上げは激減し、それがもたらすさまざまな弊害-社会的な歪みや環境問題、健康への懸念など―も、大幅に軽減されることでしょう。