ゲノム編集キャベツで胃に不調


ゲノム編集をご存じですか?

遺伝子の一部に狙いを定め、酵素を使って切るという技術です。

別の生物の遺伝子を挿入する従来の技術と比べれば、より精密な技術といえます。

しかし、従来の遺伝子組み換え技術と同様、予想もしない毒物が生み出される危険がある、と警鐘を鳴らす声があります。

現在の表示制度の元では「遺伝子組み換え食品」とみなされずに、表示のないまま市場に出回ってしまうことも危惧されています。

以下は、ゲノム編集に関する、アメリカのNGO、フードデモクラシーナウの記事(2016年9月22日)の抄訳です。

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遺伝子技術者、ゲノム編集キャベツで胃が不調に

「アトランティック」誌のゲノム編集提灯記事、リスクを把み損ねる

 

オンラインマガジン「アトランティック」のゲノム編集技術「CRISPR(クリスパー)」に関する提灯記事は、「CRISPRは、おいしい遺伝子組み換え食品の新時代への案内役となれるか」と題されており、「ゲノム編集技術は遺伝子組み換え作物の評判を挽回できるか」と問いかけている。

 

これらの“新しい遺伝子組み換え食品”は、これまでの古いスタイルの遺伝子組み換え作物、すなわち除草剤耐性や殺虫性の大豆やとうもろこしなどの食欲をそそらないものと比べると、“おいしい”のではないか、と考えられている。

アトランティックの記者サラ・シャンの記事は、スウェーデンの植物生物学者でありゲノム編集推進派でもあるステファン・ジャンソンが、テレビのレポーターのための宣伝行為としてゲノム編集キャベツを食べた様子を伝えている。

 

ジャンソンはスウェーデン外の研究者(氏名は特定されていない)から提供されたタネを使い、庭でそのキャベツを育てた。

このゲノム編集キャベツは、おいしかったかもしれないし、おいしくなかったかもしれない。しかし、ジャンソンに悪影響をもたらしたことは確実だった。

「その後彼の胃はあまり調子がよくなかった。ジャンソンは『まるでインド料理店でスパイシーな食事をした後みたいだった』と告白した」

 

驚くべきことに、ジャンソンも、またアトランティックの記者も、初歩的な学習をしていないようだ。ゲノム編集された食品は、その他のあらゆるタイプの遺伝子組み換え食品と同様、市場に出す前に、予想しない毒物やアレルゲンをテストしなければいけないというのに。

この記事を書いた記者は、「野生のキャベツはグルコシレートを含んでおり、それは辛子やホースラディッシュ(西洋わさび)にピリッとした辛味を与えるとともに、昆虫を寄せ付けない効果がある」こと、そして「それを多量に摂りすぎれば、人間に害がある」ということに気づいていた。

予想された毒物はそんなところだろう。ジャンソンの胃を不調に陥れたものが何だったのか、彼らは検査しようと思えば簡単にできたはずだ。ところが彼らはそうしなかった。

真犯人がグルコシレートではなかったとしたら? 予想しなかった毒物がゲノム編集を含む遺伝子組み換えによって生まれたものだとしたら……?

 

CRISPRはオフターゲットの(意図しない)結果を引き起こすこともあることが知られている。

驚くべきことに、アトランティックのシャン記者は、ゲノム編集キャベツが毒になる量のグルコシレートを含んでいるかもしれない、と認めたすぐ後で、「CRISPRがその問題を解決できるかもしれない」というジャンソンの言葉を引いている。

つまり、仮にゲノム編集が“おいしい”遺伝子組み換え食品を創り出さなくても、ゲノム編集作物に今存在する毒物を減らすために役立つかもしれない、というのか? まさにその毒物こそがゲノム編集の過程で引き起こされたものであるにもかかわらず?

ジャンソンとシャンは本気なのか? この驚異の屁理屈のテクニックが“遺伝子組み換え作物の評判を挽回する”ものなのか?

これでもまだ歓迎する人がいるのか? ゲノム編集技術の新しい世界を果敢に探求するために、胃の不調やそれ以上のリスクを冒してまで敢えて食べたいという人はいるのだろうか?

 

報告:クレア・ロビンソン

抄訳:安田美絵