郡の住民投票でGM作物栽培禁止(米国オレゴン州)


2日前にお伝えしたオレゴン州の動きについての続報を、ロイター通信の記事からお伝えします。

「米国の表示をめぐる騒動のさなか、オレゴン州の地方の有権者は遺伝子組み換え作物禁止令を支持

(ロイター通信5月20日)

オレゴン州の小さな2つの州で5月20日に投票が行われた。この投票はそれぞれの自治体内で遺伝子組み換え作物の栽培を禁止する法律に関するもので、論議の的となっていた。ただしそのうちのひとつの法案は新しい州法によって発効が阻まれる可能性もある。

南オレゴンにあるジャクソン郡の法案は、地域の有権者の66%近くの賛成票を集めたもようだ。この投票は国家的に関心を集め、百万ドル以上の資金調達が行われていた。わずか117,650人の有権者しかいないにもかかわらず、である。

ジャクソン郡書記のクリス・ウォーカー氏によれば、この結果はまだ非公式のものであり、3週間近くは確定しない。

この禁止令は180以上の農家と地域住民の連合によって支持されており、彼らはこの選挙の実施を2年以上かけて推進してきた。

『持続可能で健康的なエコシステムを気づかうオレゴンの人々にとって、すばらしい日だ』と、グループ“GMOフリー・オレゴン”は結果が出た後、フェイスブックページで宣言した。

反対勢力は敗北を認めたが、しかし論議は続く、と言っている。

『われわれは有権者の声を尊重します。しかし、この禁止令は悪い公共政策である、といまだに確信しています』オレゴン農業ビューローの代表であるバリー・バシュー氏は言う。

『すべての農家の、どんな農業を営むか選ぶ権利を守るために、われわれは闘い続けます』

禁止令の支持者たちは、オーガニックな作物が、除草剤耐性や害虫抵抗性などを持った遺伝子組み換え作物によって汚染されてしまう危機にさらされている、と言う。彼らはまた遺伝子組み換え作物とセットになった農薬が広範に使われることも恐れている。

『アグリビジネス企業を選ぶのか、家族経営農業を選ぶのか、の選択なのだ』法案の発議を手助けした地域の農家で、ビーツやスイスチャードを栽培するクリス・ハーディー氏は言う。

オレゴン州ジャクソン郡の法案は、法案の発効後12ヶ月以内に“遺伝子組み換え作物を収穫するか破壊するか取り除く”ことを求めている。

似たような法案は5月20日、同じオレゴン州のジョセフィーヌ郡でも承認された。しかしこちらの法案は裁判所で有効性が争われることになると予想されている。なぜならば2013年にオレゴン州議会では遺伝子組み換え作物禁止令を禁ずる法律を通過させているからだ。ジャクソン郡の取り組みはその法律ができる前から進行していたため、その適用外となる。。

モンサント社によって開発され、実験的に栽培されたことのある未承認の遺伝子組み換え小麦が昨年、オレゴン州の畑に生えているのが発見された。外国のバイヤーが、遺伝子組換え小麦の混入を恐れたため、小麦の輸出は一時的に停止するなど混乱した。

禁止令に反対する人々は、遺伝子組み換え作物への禁止を強化しようとすることは、コストがかかると言い、禁止令への反対票を投じるようキャンペーンを行っている。『すべての形態の農業と酪農を併存させることがジャクソン郡にとって重要だ』と彼らは言う。

オレゴン州ジャクソン郡は遺伝子組み換え作物を禁止しようとする最初の自治体ではない。2004年にはカリフォルニアのメンドチーノ郡が遺伝子組み換え作物の栽培を禁止するアメリカで最初の自治体となった。

ジャクソン郡の投票は、遺伝子組み換え食品に表示を義務付けることを模索する米国のさまざまな州のより大きな動きに連なるものだ。」

ジャクソン郡でGM作物の栽培を禁止にしよう、という運動が2年以上前に起こってから、「遺伝子組み換え作物栽培禁止令をつくることを禁止する」という州法が慌てて昨年制定されたようです。

栽培禁止の動きを阻もうと画策した業界団体などが州議会に圧力をかけたのでしょう。

国会や州議会などが業界団体の金の力で動かされてしまいがちなのに対し、住民投票では本当の民意が反映されます。

遺伝子組み換え作物の栽培を禁止したり、表示義務付けを求める住民投票と、それを先回りして阻止しようとする議会の動きとの攻防がアメリカではこれからも続きそうです。

わたしたちもアメリカの市民の健闘を祈り、応援していきたいものです。