ページタイトル-GMは環境に問題

◆交雑で在来種が消えてしまう!?

世界三大穀物のひとつ、とうもろこしの原産地はメキシコだ。そこでは本当に多種多様な品種がある。日本人におなじみの黄色のものだけでなく、白、赤、黒、紫など、色もさまざまなら、形もさまざま。五千年以上の歳月をかけて現地の人が育んできた豊富な在来品種は、200種を超えるとされる。

多様なコーン

メキシコ人にとって、とうもろこしは主食となる大切な穀物だ。だから、在来のとうもろこしを守るため、遺伝子組み換えとうもろこしの栽培は禁止されてきた。

トルティーヤ

  ところがそうして大事に守られてきたはずの在来のとうもろこしの遺伝子を分析してみると、そこにないはずのものがあった。メキシコ南部の辺境の地、オアハカ州とプエブラ州で、純粋な在来のとうもろこしと思われた品種から、組換え遺伝子が発見されたのだ。遺伝子組み換えとうもろこしによる遺伝子汚染は、人間の想像をはるかに超えるスピードで広まっている……。イグナシオ・チャペラ教授が2001年、雑誌「ネイチャー」に発表したこの論文は、世界に衝撃を与えた。

在来種から組換え遺伝子

なぜ、そんなことが起こったのか。原因としてはいくつかの可能性が考えられる。メキシコはGMコーンの栽培は禁止しているものの、輸入は禁止していない。輸送中にこぼれたGMコーンが道路沿いなどに自生しているのが各地で発見されている。また、食用として輸入されたGMコーンを、メキシコの農民がGM品種とは知らずに、タネとしてまき、栽培してしまった可能性も指摘されている。GM作物にも普通の作物と同じように花が咲く。その花粉は風で運ばれ、隣の畑へ、あるいはもっと遠くへと飛んでいく。その花粉を受粉してしまえば、そこではGM作物との交雑が起きる。そして、瞬く間に組換え遺伝子は、環境中に広まって行くことになるのだ。

メキシコでの交雑の原因

その結果、メキシコのとうもろこしの多様な在来品種が存続の危機にさらされることになった。これはメキシコ人にとって問題なだけじゃない。多様な在来品種は、とうもろこしの品種改良をするためには、欠かせない材料だ。その健全な在来品種が失われてしまうということは、世界中の人類すべてにとっての貴重な遺伝資源が失われるということなんだ。

在来種は人類共通の資源

遺伝子交雑したとうもろこしの中には、見た目でそれとわかる奇形も各地で発見されている。遺伝子交雑が奇形以外にどんな問題を引き起こすか、予測は不可能だ。将来、成分が違うとうもろこしや、毒物を含むとうもろこしなどが、偶然できないとも限らない。

奇形コーンと毒コーン

遺伝子汚染による在来品種の喪失……。これは人類の生存基盤である生物多様性を脅かす、とても重大な問題なんだ。   参考資料: トウモロコシ品種多様性の中心地であるメキシコにおいて遺伝子汚染 http://journeytoforever.org/jp/foodfirst/report/sp02v8n2.html 遺伝子組換え体の生態系への影響に関する報告 http://www.env.go.jp/council/former2013/13wild/y131-01/ref02.pdf

◆スーパー雑草の出現

GM作物の主流を占めるのは「除草剤耐性」、つまり除草剤をかけても枯れない、というもの。中でも多いのは、モンサント社の除草剤「ラウンドアップ」(主成分:グリフォサート)に耐性を持つ「ラウンドアップレディ」品種だ。このレディは女性を表すladyではなく“Are you ready?”(準備は大丈夫?)というときのready。つまり、「ラウンドアップをかけられたって、大丈夫!」ということを意味している。 ラウンドアップレディのGMコーンや大豆がアメリカで大々的に栽培されるようになり、ラウンドアップが大量に散布されるようになるにつれ、自然もそれに適応して変化を始めた。 ラウンドアップをまいても枯れない雑草、「スーパー雑草」が出現し始めたのだ。2001年にアメリカでヒメムカシヨモギという草に除草剤耐性があるのが発見され、今では15種類ものスーパー雑草が確認されているという。

スーパー雑草-2リサーチ企業「Stratus」が、アメリカの31の州で数千人の農家を対象に行った2012年の調査によれば、アメリカの 農家の約半数(49%)が、ラウンドアップに耐性を持つ雑草が畑に生えていると言っている。2011年には36%だったので、急速に増えていることがわかる。

アメリカ南部では状況はさらにひどく、ジョージア州では92%の農家が、ラウンドアップ耐性の雑草があると言っている。 参考資料:Organic Consumers Association http://www.organicconsumers.org/articles/article_26999.cfm) スーパー雑草の中には、太く巨大に成長するものもあり、パーマーアマランスという草は、背丈が180cm~3mほどになり、コンバインの刃が折れることもあるという。 こうした状況に対し、企業は、複数の除草剤に対して耐性を持つ品種を開発し、複数種類の除草剤をまくことで問題を解決するよう農家に働きかけている。 しかし、それが本当に問題の解決になると、キミは思うかい? ラウンドアップに耐性を持つスーパー雑草がでてきたからといって、他の除草剤も一緒にバンバン撒くようにしていったら、今度はその除草剤にも耐性を持つスーパー雑草が現れるだけなんじゃないのかな? まともな学習能力のある人なら簡単に予測できそうなものなのに……ね?

◆より危険な除草剤の使用へ

GM作物でなければ、除草剤をかけると作物自体も枯れてしまうため、除草剤はごく限定的にしか使えない。でも除草剤耐性のGM作物なら枯れる心配がないから、除草剤はかけ放題。今までより飛躍的に大量に使われるようになってしまうんだ。しかも、スーパー雑草への対処として、何種類もの除草剤を撒くようになれば、使用料はさらに増えてしまう。 量だけでなく、質的な変化も恐ろしいものがある。ラウンドアップ以外にも耐性を持つように開発された新タイプのGM品種―これが、何に耐性を持っているかというと、2,4-D(ニィヨンディー)や、ジカンバ、つまりベトナム戦争でアメリカ軍が撒いた「枯れ葉剤」の成分なのだ。

枯葉剤の成分へ-2

こうした除草剤は土壌に沁みこみ、雨で流れて川や地下水に混じり、畑にとどまらず広い範囲の環境を汚染することになる。野生動物たちも影響を受けるし、そうした水が水道水にも入って来て、最終的には人間も悪影響を被ることになる。 枯葉剤の影響でベトナムでは、ベトちゃんドクちゃんのような奇形児が大量に生まれたことはキミも知っているだろう? そんな恐ろしい薬剤が、GM作物とともに世界中に広がって大量に撒かれるなんて、考えただけでゾッとするね。

枯葉剤は使用禁止でなかったの

◆スーパー害虫の出現

GM作物の中で、ラウンドアップレディ品種に次いで多いのが、“Bt”という殺虫毒素を持った品種だ。バチルス・チューリンゲンシスという土壌中の細菌の遺伝子が組み込まれていて、殺虫毒素を作り出すため、昆虫がそれを食べると死んでしまう、というものだ。 たとえば、アメリカのコーン畑では、アワノメイガという害虫が発生するが、Btコーンを食べたアワノメイガの幼虫は、その毒で死んでしまう。そのため農家は殺虫剤散布の手間が省けて便利だ、ということになっているのだが、しかし、自然の適応能力はすさまじい。そのうちBt毒素に強いアワノメイガが生き残って繁殖するようになってきたのだ。

スーパー害虫-3

また、コーンの根につくネキリムシという害虫の中にも、Bt毒素に耐性を持つものが現れはじめた。ネキリムシにやられたコーンは収穫前に倒れてしまう。そのため農家はネキリムシ予防のための殺虫剤を再び土壌に散布するようになってきているという。殺虫剤が必要ない、というのがBtコーンの謳い文句であり、メリットであるはずなのに、それではなんの意味もないわけだ。Bt耐性のネキリムシが最初に発見されたのは2011年だが、2013年のイリノイ州の調査では、約半数の農家が殺虫剤を使うと答えている。 また、インドでは綿につくコナカイガラムシという害虫の中に、Bt耐性を持つものが現れてきて、綿花の収量が低下しているという。 フィリピンでもBtコーンを生産している地区では、どんどん強い害虫が現れてきているという。以前はアワヨトウしか害虫のいなかった畑に、今ではヨコバイも現れた、など、Btコーンの生産によって結局害虫が増えてくる、と多くの農家が訴えている。

除草剤のケースと一緒

参考資料:遺伝子組み換え効かぬ害虫、予想より早く出現 米で被害

http://digital.asahi.com/articles/TKY201307310036.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201307310036

◆生物多様性のない「緑の砂漠」

除草剤によって雑草が枯れつくした畑では、(スーパー雑草がなければ)GM作物以外目に入る草は何もない。またBt作物の根からは殺虫成分が土に沁み出し、200日以上残留して、土の中の生物多様性をも破壊する。 生物多様性の失われた畑。緑が豊かに茂っているように見えて、雑草や虫たちの命のざわめきが消えた畑……その荒涼とした環境から、GM作物の畑は、「緑の砂漠」とも呼ばれている。

◆周囲の畑や水鳥にまで被害が

GM作物の畑で除草剤を撒くと、その除草剤が風で流れるなどして、周囲の畑まで汚染することがある。フィリピンの農家は、隣の畑の除草剤によって自分のバナナの木が枯れたり、マンゴーの花がすぐに終わってしまうなどの異常が起きていると主張している。 Btコーンの花粉は風に乗って、周辺の畑や草地などにも飛んでいく。しかしBtコーンの花粉がかかった植物の葉を食べるだけでも、蛾の幼虫が死亡したり発育不全になることが実験によって確かめられている。つまりBtコーンを栽培すれば、その畑の周囲でも、昆虫が減って行く可能性が高い。 また、土に沁み込んだ除草剤は雨で流れて、川や地下水を汚染する。GM畑の周辺では、水鳥が大量に死ぬこともあるという。 「つい先日もカモとガン60羽が死にました。2-3歩歩いて、突然倒れて死んでしまったんです。向こうで猛毒の除草剤を散布しているので、雨が降るとこっちに水が流れてきて水の中にいる鳥が死んでしまうんです。」とパラグアイの農家は証言する。 除草剤による環境汚染 水鳥が死ぬくらいなら、当然魚や蛙など、さまざまな水生生物にも被害が出ているはずだ。 野草、昆虫、土壌動物、水鳥、水生生物など、さまざまな生きものが被害に合い、生物多様性が破壊されていく。地球上に生きるさまざまな生物は、知らないうちにお互いに影響を与えあって、安定した生態系を築いている。1種の生物が絶滅すればあるいは減少すれば、他の何種類もの生物が影響を受ける。生物多様性が破壊されるということは、とりもなおさず、人間の生存基盤が脅かされているということなんだ。   参考資料: http://iwj.co.jp/wj/open/archives/96125 映画「モンサントの不自然な食べもの」マリー・モニク・ロバン監督

◆日本でも広がる遺伝子汚染

日本では遺伝子組換え作物の商業栽培はされていないが、輸入は大量にされている。 一番多いのがコーン、次が大豆、そして菜種、最後が綿実だ。特にナタネは粒が小さいこともあってか輸送中にこぼれたGM品種が港や幹線道路沿いに自生することがある。そのGMナタネが野生の菜種と既に交雑し始めている。 在来ナタネの染色体数は20本だが、GMナタネは38本。その中間の29本の染色体を持ったナタネが、日本各地で確認されているのだ。

自生GMナタネと交雑種

GMナタネの自生やその交雑種が広まっていけば、将来的にはナタネと同じアブラナ科の野菜にまで遺伝子汚染が広がっていく恐れもある。アブラナ科の野菜は非常に種類が多く、しかも交雑しやすいからだ。大根、かぶ、小松菜、白菜、キャベツ、ブロッコリー……これらはすべてアブラナ科に属する。自分でタネ採りまでする農家は現在きわめて少ないとはいえ、いざしようと思ったときに、交雑してしまって純粋な在来種のタネが採れない、というのでは大問題だ。遺伝子汚染がこれ以上広がらないうちに、本当なら輸入停止などの措置を取りたいものだ。

三重県の対策-2参考資料:遺伝子組換えナタネ調査隊