R1/5/23の消費者委員会食品表示部会を傍聴し、ゲノム編集食品に表示は不必要との方向に議論が進んでいきそうな気配を感じました。
(消費者委員会食品表示部会についてはこちらを)
出来る限りの働きかけをしたいと思い、部会の委員名簿を調べ、約半数の委員に意見書を送ったところ、
部会長の高知大学教授 受田浩之氏から、資料受領のお礼のメールを頂きました。
少なくとも資料は読んでくださったようですから、まずは送ってよかったと思います。
以下にその意見書の一部を挙げておきます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
遺伝子組み換えであれ、ゲノム編集であれ、人為的にゲノムをいじくることで、予想もしない問題が起こることがあり、人間の健康を害するような成分が生み出される可能性もあります。最低限表示は義務付けていただきたいと思い、お手紙を差し上げました。
そのことをご理解いただくために、「特定の遺伝子を狙い撃ちし、その働きを封じ込める」という点でゲノム編集と共通する「RNA干渉」という技術にまつわる醜聞についてまずはお知らせしたいと思います。
RNA干渉技術を用いたジャガイモは、既に日本でも安全性審査を通っており、(平成29年7月、アクリルアミド産生低減及び打撲黒斑低減ジャガイモ、SPS-00E12-8、申請者 J.R. Simplot Company)一般の遺伝子組み換え作物と同様の基準で表示義務が課せられています。(ジャガイモを揚げるときにできる発がん物質アクリルアミドを減らし、またぶつけてもメラニン色素を生成せず、黒くならないようにしたジャガイモです)
このジャガイモを開発したJ.R.シンプロット社の研究者であったカイウス・ロメンス博士(既に退職済み)は、特定の遺伝子の働きを止めることによって、予想外の成分の変化が起きることを指摘しています。
「約1年前、私は元同僚の何人かが書いた研究論文を調べました。そこには、ジャガイモのメラニン色素をつくる遺伝子(PPO)の抑制が、α-アミノアジペート(アミノアジピン酸)の大幅な増加を引き起こすという証拠が示されていました。」「α-アミノアジペートは神経毒として知られています」
「さらに別の元同僚は、PPO(メラニン色素をつくる遺伝子)の抑制がチャコニン・マロニルの増加を引き起こすことを実証しました。この化合物についてはほとんど知られていませんが、グリコアルカロイド毒素の誘導体で、吐き気、嘔吐、神経学的作用など、多数の健康問題を引き起こす可能性があります。」
出典:GM Watch “GM potatoes: The risks to health”
つまり、人間が遺伝子の働きを究明したつもりでいても、実はゲノム全体には未解明の働きがまだまだある、ということです。
ですから、「筋肉量を抑える」という遺伝子をゲノム編集によって切断すれば、「筋肉が大きく成長する」という効果が得られるでしょうが、それ以外に予想外の成分変化が起きる可能性がある(仮にオフターゲットがなくても)ということです。
それが未知の成分である可能性もあります。何十年か経ってから有害性がはじめてわかる、という可能性もあるのです。
こうした潜在的なリスクがある以上、避けたいと思う人には避ける権利を必ず保証すべきですし、そのためには、表示は絶対に必要です。
カイウス・ロメンス博士が、シンプロット社のジャガイモの危険性について警告を発した本は昨年10月に出版されたばかりですが(“Pandra’s Potatoes: The worst GMOs”)、現在絶版で入手不能となっており、また、“遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン”の天笠啓祐氏によれば、ロメンス博士は現在行方不明となっています。シンプロット社か、あるいは他の遺伝子組み換え推進派による工作が疑われます(ロメンス博士はモンサント社にも在籍していたことがあります)。
“不都合な真実”を隠したい人々がいます。〇〇様がそちらに味方されないことを願っております。
補足資料1 DNAとは、ゲノムとは、遺伝子とは
染色体
ヒトのすべての細胞の核の中には23対(46本)の染色体があります。
DNAとは
遺伝情報が記された2本1組のらせん状のひも。
染色体の中に細かく折りたたまれて存在します。
個体のすべての細胞の中には同じDNAが入っています。
ゲノムとは
染色体とDNA上にある生物のすべての遺伝情報。
(細胞の核の外にあるミトコンドリアの遺伝情報は別とされます)
遺伝子とは
DNAの中で働きがはっきりとわかっている部分。
働きとは特定のたんぱく質をつくること。DNA全体の約2%。
遺伝子以外の98%のDNAは?
ほんの十年ほど前までは何の働きもないと考えられていましたが、遺伝子の働きを制御するなどの役割をしていることがここ数年でわかってきました。
補足資料2 たんぱく質合成のしくみとRNA干渉、ゲノム編集
遺伝子は大切な設計図なので、コピーして使う。
コピー機にあたるのがRNAポリメラーゼ。
DNAを読み取り、それを転写した物質=RNAをつくる。
RNAは細胞の核から外に出て、リボソームと合体し、
設計図どおりにアミノ酸をつないでたんぱく質を合成する。
そのRNAを壊してしまうのが、RNA干渉。
ゲノム自体をいじるわけではないが、
たんぱく質を作るという遺伝子の機能は封じ込められてしまう。
RNA干渉とゲノム編集の類似性
特定の遺伝子の働きを止めるという点で共通する。
ゲノム編集は特定の遺伝子を切断する。
RNA干渉は遺伝子自体をいじるわけではないが、その機能を妨げる。
見方によってはゲノム編集のほうがRNA干渉以上に乱暴な技術とも見ることができる。