遺伝子組換え食品の表示  その1~日本の表示制度


日本で遺伝子組換え食品の輸入が始まったのは1996年ですが、当初、表示制度は存在せず、何も表示がないままに流通していました。しかし、表示を求める消費者の声は大きく、消費者運動の成果として、2001年4月から遺伝子組換え食品の表示が義務化されました。

(参考資料:遺伝子組換えに関する表示に係る加工食品品質表示基準第7条第1項及び生鮮食品品質表示基準第7条第1項の規定に基づく農林水産大臣の定める基準    http://www.caa.go.jp/jas/hyoji/pdf/kijun_03.pdf

この制度にはいろいろと問題が多いのですが、まずはこのわかりにくいしくみを、理解するところから始めましょう。

ちなみに現在日本で輸入が許可されている遺伝子組換え作物は下記の8種類です。

じゃがいも、とうもろこし、ばれいしょ(じゃがいも)、なたね、綿実、アルファルファ、てんさい、パパイヤ

原則:遺伝子組換え作物やその加工品には、その旨を表示しなければなりません。

もしも、遺伝子組換えのじゃがいも、パパイヤなどを生鮮食品売り場で売る際には「遺伝子組換え」と書いたラベルを貼る必要がありますし、加工食品の場合にも、原材料欄に「大豆(遺伝子組換え)」のように表示しなければなりません。

しかし、この原則にはいくつかの例外があります。

例外規定①:組み換えDNAやそれによって生成したたんぱく質が含まれない食品には表示義務がありません。

遺伝子組換え原料の油などには、組換えられたDNAやそれによって生成したたんぱく質が含まれていない、とされています。検査しても証拠となる物質が検出できず、原料が遺伝子組換えであるかどうか確認しようがないから表示義務は課さない、というのが政府の言い分です。

コーン油、大豆油、なたね油(キャノーラ油とも)、綿実油、サラダ油(これらの油の混合)には、「遺伝子組換え」の表示がありませんが、これらの油のほとんどは、実際には遺伝子組換えなのです。

遺伝子組換えの飼料(とうもろこしや大豆)を食べて育った家畜の肉も、組換えDNAやそれによって生成したたんぱく質は含まない、とされており、表示義務がありません。

醤油もたん白質がアミノ酸にまで分解されているので表示義務がないとされています。

また、液糖、水飴、デキストリンといった、とうもろこしからつくられる甘味料類、コーンフレークなども、この条件にあてはまるため、表示義務がないのです。

表示がないと気づかないため、消費者のほとんどが、大量の遺伝子組換え食品をそうとは知らずに食べていることになります。

この規定があるがために、「遺伝子組換え」の表示義務が課される食品は、豆腐、納豆、味噌、豆乳、コーンスターチなど、ごく一部にとどまってしまっています。

例外規定②:「主な原材料」でない場合は表示義務がありません。「主な原材料」とは原材料の重量の多い順から数えて上位3番目以内であり、かつ重量全体の5%以上を占めるものを指します。

原材料は多い順に記載することになっていますが、その3番目以内に入らないものは表示しなくてもいいのです。

本来、遺伝子組換えコーンスターチには表示義務がありますが、原材料欄で4番目に書かれていた場合、それは遺伝子組換えのものかもしれません。コーンスターチはただ単に「でんぷん」と書かれている場合もあります。

例外規定③:5%以下の意図せぬ混入の場合は、表示義務がありません。

例えば、コンテナに入っている大豆を空けて、また別の大豆を積み込むような際に、コンテナの片隅に前の積荷の大豆がわずかに残っていて、新しい積荷と混ざってしまう、というようなことが起こる可能性があります。意図的ではないそうした混入が、5%以下の場合には、遺伝子組換えのものが混ざっていても「遺伝子組換えではない」の表示を認めることになっています。

ですから、納豆や豆乳に「遺伝子組換えでない」と表示されていても、そこに5%以下の遺伝子組換え大豆が混ざっている、という可能性があります。

また、表示方法が4種類あることもわかりにくさの原因です。

①    「遺伝子組換え」の表示

②    「遺伝子組換え不分別」の表示

③    「遺伝子組換えでない」の表示

④    表示なし

 

①    農場から食品製造業者までの生産流通の過程で分別管理がきちんとされた遺伝子組換え農産物を使った場合、「遺伝子組換え」の表示が義務づけられます。

②    上記のような分別管理がされたことを書類などで証明できない場合、「遺伝子組換え不分別」の表示が義務づけられます。

③    上記のような分別管理をきちんとされた非遺伝子組換え農産物を使った場合、「遺伝子組換えでない」の表示を任意ですることができます。

④    非遺伝子組換えの農産物を使っていても、その表示は義務ではないので、なにも表示しなくても構いません。

油の場合④の「表示なし」であっても、遺伝子組換え原料であることがほとんどです(例外規定①にあてはまるため)。しかし納豆の場合、「表示なし」は非遺伝子組換えであることを意味します。納豆にはたんぱく質が含まれますので、遺伝子組換え大豆を原料に使ったら、「遺伝子組換え」という表示をしなくてはならないからです。

つまり、おなじ「表示なし」であっても、品目によって、遺伝子組換えであることを意味する場合と、非遺伝子組換えであることを意味する場合とがあるわけです。

消費者の多くはこうした複雑な表示制度を知らないため、「遺伝子組換え」の表示さえなければ安全だ、非遺伝子組換えなんだ、と思い込んでいるのが現状です。

まずはこの表示制度を正しく理解し、表示のない遺伝子組換え食品を食べないように気をつけたいものです。

主な遺伝子組換え食品と表示義務のあるなしを一覧表にしましたので、ご確認ください。

作物 食品 表示義務
とうもろこし とうもろこしを飼料とした食肉 なし
コーン油 なし
コーンフレーク なし
液糖 なし
水飴 なし
デキストリン なし
その他コーンシロップからつくられる糖類 なし
醸造アルコール なし
醸造酢 なし
生とうもろこし・コーン缶・冷凍コーン等 あり
コーンスナック菓子 あり
ポップコーン あり
コーンスターチ あり
コーンフラワー あり
コーングリッツ あり
大豆 大豆・大豆油粕を飼料とした食肉 なし
大豆油 なし
醤油 なし
乾燥大豆・枝豆・大豆もやし あり
大豆水煮・煮豆・炒り豆等 あり
豆腐・油揚げ類 あり
凍み豆腐・おから・ゆば あり
納豆 あり
豆乳 あり
味噌 あり
黄な粉 あり
じゃがいも 生じゃがいも・冷凍じゃがいも あり
ポテトスナック菓子 あり
ばれいしょでんぷん あり
なたね なたね油 なし
綿実 綿実油 なし
てんさい てんさい糖 なし
アルファルファ アルファルファスプラウト あり
パパイヤ 生パパイヤ あり